こんにちは、田上です。
先日、福島県の白河市へ伺う機会がありました。
白河市は6万5千人ほどの市ですが
有名なところで言えば新撰組が攘夷軍と戦った地であったり、
封建時代の藩主で領内の殖産振興に最も意を用い、名君と仰がれたのが松平定信です。
特に天明の大飢饉の際には、緊急に食糧を調達して領民を救済したため、
東北諸藩の中で米沢藩と白河藩の2藩だけが餓死者を出さずに
済んだエピソードが残っています。
その松平定信公によって
1801年(享和元年)に日本初で最古とされる
公園、南湖公園がある自然の豊かな印象を持つ市です。
そんな白河市にアウシュヴィッツ平和博物館という
少し意外とも思える博物館がありました。
私の実家がある広島県福山市にも
アイシュヴィッツ資料館があるのですが、
里帰り時期には資料館は開園しておらず、気になってはいるものの
拝見する機会がなかったこともあり、今回の白河市の
アウシュヴィッツ平和博物館の存在を知り、足を運びました。
博物館へ訪問し、なぜこの町でぜアウシュヴィッツなのか、
現館長にお聞きしたところ、資料館を創設された創立館長さんは
デザイン関係のお仕事をされておられたそうですが、
ポーランドを訪問された際に戦争を体験した子ども達の
その当時の絵を見て心が痛み、同じ過ちを繰り返さないためにも
日本でドイツ、ポーランドでおきたことを伝えようと
このアウシュヴィッツ平和博物館の開設に至ったそうです。
開園当初は栃木県にあったそうですが
借地だったことから、この白河市の地元の地主さんから
現在の土地を寄付して頂き、建物は長野県の建築関係の方が
無償で建てて下さったりと、全て手作りで運営しているとのことでした。
博物館には当時のアウシュヴィッツで何が行われていたのか
アウシュヴィッツ解放に至るまでの経緯やその後などがわかる資料が
展示してあったり、アウシュヴィッツへの集団搬送を想像させる
貨物列車のコンテナ内にポーランドの子ども達が書いた
戦争体験の絵を展示していたり、アンネ・フランクの家をモチーフにした
レンガ調の建物の展示室などが併設されています。
アウシュヴィッツ博物館ということで、
アウシュヴィッツで何が行われていたのか、
様々な展示物から説明されていますが、その中で考えさせられたのが、
ドイツがアウシュヴィッツを造り出すまでの経緯です。
1921年、第一次世界大戦の敗戦国になったドイツに勝戦国、
主にフランスから賠償金額が増額され、賠償金は200億マルクから
1320億マルクに6倍という膨大な増額で、
たちまち賠償金の支払いが滞り、
1923年、フランス、ベルギーは賠償金が支払われないことを理由に、
ドイツのルール地方を差し押さえということで占領されます。
ルール地方はドイツ工業の心臓部で、物資の生産がたちまち滞り、
モノが不足し物価が上がり結果、常識を超えたインフレがドイツ国内で起き始めます。
ドイツ国内では第一次世界大戦前敗戦前に比べ、
物価は一兆3000億倍にも達し、ドイツ紙幣は紙きれになり、
町には失業者があふれ、失業率は25%から30%、
失業者実数は550万人にたっし、市民生活は完全に破壊され、
人としての尊厳を保つことさえ難しい状況だったこと、
このときアメリカからの資金援助も世界大恐慌が起き、
アメリカ自身の内需が傾いた為、ドイツへの資金援助が途絶え
ドイツ国内は生き地獄のような現実社会の中でドイツ国民に
強く満盈した憎悪がヒトラーを生み出し、ポーランドへの侵略、
ユダヤ人浄化のためのアウシュヴィッツへと繋がったとされています。
人間の基本的な営みである衣食住に不安なく、
仕事に生きがいを持ち、家族と心穏やかに過ごすことができれば、
人の心が大きく偏ることもないのではと思いますが今、当時の
ドイツと似たようなことが日本国内でも現実に起きているように感じます。
今の日本は経済発展主義、成果主義の強い思考の中で
かつての平等神話が崩壊し格差社会が構築され、強い二極化が進んでいます。
企業も生き残りをかけ、勝ち組、負け組がはっきり分かれ、
企業が安定した正社員の雇用から派遣社員やパートなどの雇用に
シフトすることで不安定な職を選ばざるおえない職業格差、
夕張市の行政破綻などに見られる地域格差、親の経済状況で進路が
限定されてしまう教育格差など様々な格差が影を落とし根付いてきています。
収入が低い、努力が報われない、将来に希望が持てない
など不安定感が犯罪へと繋がり経済苦から若いホームレスや自殺者が
ここ最近、増えています。
カグヤクルーとして強く考えさせられるのは教育的格差です。
有名私立大学などは世間からエリート校として認知され
そこに入学すればエリートだと見られ
またそのような大学は中高一環制をとっていることが多く
高額な入学金が必要となったり、入学試験対策には塾へ
通わなくてはならないなど経済的な負担も多く
親の経済力に強く影響されます。
健全な社会、健全な国民を育てるには
健全な教育がなくてはならないと思います。
特に生涯学習のスタートである幼児期には
人間の基礎作りとなる重要な時期ですので、ここに
格差があってはならないと思います。
この時期、選挙戦などで政権争いや増税などが話題になっていますが
今一度、社会政策の観点から日本の社会全般を見直す必要が
迫られている時期ではないでしょうか。
そして先進国としての日本の役割として
世界の後進国への自立支援を果たしていくことが
世界から求められる日本の姿ではないでしょうか。
オルタナティブコンサルタント
田上 貴士