昨日は、妙見高菜の漬物のお手入れを行いました。今年の春先に漬けたものはこの時期に次第に塩が抜けて漬け直しが必要になります。もともとこの漬物の原理は、科学で分かっている部分とわかっていない部分があるように思います。
私は石も自然石にこだわっていますが、同じ重しでも出来上がりが異なるのです。他にも木樽で、その漬物の小屋を発酵させるような場にしていますから環境が整っています。しかし今でも、毎回発見があり、この漬物の奥深さに驚くばかりです。
今回は、一樽だけ失敗してしまい腐敗してしまったものがありました。これは蓋が少し大きかったので樽のサイズにあわずに重しがかからなかったからです。しかし水が上がっていたのですが味も香りもやや腐敗に傾いていて厳しいものがありました。
この漬物は科学的には乳酸発酵によって醸成され仕上がっていきます。発酵の世界では、乳酸菌と腐敗菌の働きによって絶妙に調和されて漬物はできます。乳酸菌は塩の中でも平気で空気がなくても元氣に活動できます。しかし腐敗菌は塩や酸が苦手です。漬物の塩分がなくなり空気がたくさん入ってくると腐敗菌の方が増えていき食べ物は腐敗して人間には食べれません。
もともとこれらの乳酸菌や腐敗菌は、分解者です。自然界では循環を促し、最終的には土に帰す役割を持っている微生物です。その微生物たちの代謝から産まれた成分によって私たち人間も栄養などを吸収することができています。
私たちすべての生き物は、他者の働きによって栄養を得ていてこれが自然の共生原理でもあります。よく腐敗したものを食べると食中毒になると思い込んでいる人がいますが、腐敗菌は別に食中毒菌ではありません。香りや味わいがアンモニアを含め、腐敗に傾くのであって腐敗菌から出てくる働きを栄養にするものにウジ虫やハエ、その他の生き物が集まってきますが食中毒菌がいるとは限りません。
もともと食中毒菌は、ボツリヌス菌や、サルモネラ菌、赤痢菌、ノロウイルスなどもありますがそれぞれは付着していたら腐敗していない食べ物を食べても食中毒になります。手洗いや熱での消毒が必要な理由でもあります。その中のいくつかの微生物は、増えすぎて食中毒になるものと、少し付いているだけでも食中毒になるものがあります。
身体に異物としてその微生物を感知しますから、すぐに下痢や嘔吐でその微生物を体外に排出しようとするのです。人間の身体には、100兆匹の微生物で構成されています。種類も相当な数のものがいます。その中でも合わないものがあるから食中毒になるのです。
乳酸菌といっても、あらゆる菌が組み合わせっているものです。それを美味しいと感じるところに人体の不思議があるのです。私たちが普段食べている、チーズや納豆、キムチや漬物、甘酒やワインなどあらゆるものはこの乳酸発酵のもののおいしさです。若々しく細胞を保つのに、腐敗の方ではなく乳酸の方を多く取ろうとするのはそれだけ人間の体内の微生物がその働きの栄養素を欲しがっているからでしょう。
漬物の不思議を書くはずが、微生物の話になってしまいましたが私はこの漬物の持つ智慧は未来の子どもたちに必ずつながなくてはならないものだと確信しています。発酵の智慧、重力や引力の智慧、場づくりの智慧、炭の智慧、樽の智慧、塩梅の智慧、太陽や日陰の智慧、風通しの智慧、季節や作物の育て方の智慧、ウコンなど植物の智慧、手入れの智慧、めぐりの智慧、郷土の智慧、醸成の智慧、、まだまだたくさんありますが智慧の宝庫がこの漬物なのです。
子どもたちに暮らしフルネスを通して、大切な智慧を伝承していきたいと思います。