世界では30万種の植物があると言われますが、その中でも私たちが主に栽培しもっとも生活で利用しているのは3種類だと言われます。それは稲と麦とトウモロコシです。その中でも稲は世界人口の4分の1が毎日食べますからそれだけ稲の存在は大きいということです。
今回そんな中で、偶然にご縁があって自然農での野生種の蕎麦をはじめることになったのですがそこでもいろいろな発見があります。
そもそも私たちが暮らしの中で食べている植物は、先祖が長い時間をかけて野生していた植物を栽培してきたものです。その栽培を通して、色々な品種改良を行われてきました。それは長い時間の関係性においてそのものとの相性を高めて共生をすることでお互いにメリットが多い絆を結ぶのです。
たとえば有名なものでは、犬がありますが犬はもともとオオカミや山犬というように野生のものは人間と暮らすようには変化していません。それを長い時間をかけて人間とともに生活していく中で顔は丸くなり、尻尾はふるようになり、番犬や狩りの手伝いなど人間と一緒に食べて暮らしていく中で変化してきたといいます。
他にもミニマムでは麹菌という発酵をする菌も、同じように最初は野生のカビ菌で人体に有害でしたが麹屋が長い時間をかけて人体に有害なカビだけを取り除き、人体に有益なカビを長い時間種菌として育てて増やしていくうちに今の麹菌になったのです。
野生種と栽培種というのは、言い換えれば人と共に生きてきたか、それとも人とは異なるところで生きてきたかという違いのことを言います。
蕎麦というものにも同じくそれがありますが、蕎麦はもともと石がゴツゴツしたあまり土地が栽培に適さないところに野生するのが本来の姿です。タデ科といって、あまり虫も食べず周りの野草を抑制することで有名ですが昔は飢饉のときにそなえて農民たちが栽培に取り組んできたものです。
野生種には特徴があります。
その一つは「種子の脱粒性」です。これは稲や麦などは収穫する際にも種が着いたままですが、野生種は少しでも触れるとポロポロと落ちていきます。野生は、実れば自然に地面に種を落とすのですが栽培種は落とさなくなっています。これも長い時間をかけて種を落とさない種だけを大切に育てて栽培に適するように変化させたのです。
他には、「種子の休眠性」というものがあります。これは大豆などはほとんど毎年発芽しますが野生種は周りの状況を観て発芽するかどうかを自らで判断するというものです。よく発芽率などと書かれていますが、本来野生種はあまり発芽しないのです。何年も、自分の出ていくときを狙い定めて出ていくという具合です。これも長い時間をかけて先祖が発芽するものだけを選んで残し育てて栽培に適するように変化させてきました。
野生というものはそのまま地球自然に合わせて自らが自生したものであるのに対し、栽培したものは人間に合わせてお互いに共生したものです。如何に関係性を結ぶかということの中に、この地球で長い時間を生きていく共生と貢献が育て育ちあう関係ということでしょう。
お互いが必要とし、お互いが協力をする、これが何よりも種の永続性を保障すると確信していた先祖には本当に頭が下がります。今の時代は、共生ではなく管理によって自分のみの利害によって生き延びようとしています。昔の品種改良はお互いの共生と貢献ですが、今の遺伝子組み換えなどの品種改良は言い過ぎかもしれませんが人間側の一方的な強制と迫害、搾取のようにも目に映ることがあります。
果たしてこれが本当に永続性を保障するのか、先祖が選択しなかった方法ですがこれがどうなるのかは農薬や肥料の先に土が疲弊し涸渇するのをみていたら一目瞭然です。先祖が大切に何千年の何万年も築いてきた今までの関係を破壊するツケがいつの日かまわってくるようにも思います。
野生種を育てるということがどういうことか、もう一度考えて学び直してみたいと思います。蕎麦ははじめてですが、野生種に近いものと触れるのは発見ばかりです。楽しく取り組んでいきたいと思います。