自分に正直~自他信頼の境地~

先日、自分との信頼関係の築き方が他人との信頼関係の築き方であるという話をお聴きする機会がありました。つまりは自己信頼=他己信頼といことなのでしょう。これを少し深めてみたいと思います。

たとえば、「他人のせいにする」という生き方があります。これは何かの事物があったとき、すぐに環境のせいとか、誰かのせいとか、忙しさのせいにします。これは幼少期から沁み付いてしまうもので、叱られて嘘をついたり上手くいかないときに言い訳をしたりしているうちに次第に甘えが入り自己形成に沁み付いてしまうのかもしれません。そしてこの「他人のせいにする」に落とし穴があるのは、他人のせいにはしないと自分で思っている人でも「自分のせいにする」ということも「自他のせい」は変わりませんから結局は同じ甘えに陥ってしまうことです。

自分への甘えが入ってくると斜めに物事をみてしまい、何を直せばいいかが分からなくなります。素直になれないと物事の実相は正しく顕れず、そのことから迷い惑い自分を見失ってしまいます。そういう時は一度立ち止まって、自分は今、正直かどうか、誰のせいにもしていないかと自分を見つめ直す必要があるように思います。

この「自分に正直」というのは、誰のせいにもしないということでありそれはお互い様なのだからお互いに素直に実践を積み重ねましょうという境地です。そして自分に正直であるというのは自己信頼にとって何よりも影響を与えます。自分というものをどれだけ丸ごと認め、自分を信じて実践を続けるか、そこには心が決めた覚悟に対してその自分の努力を肯定しています。誰のせいにもしないというのは、自分が甘えなければいいということであり、直すのは自分自身であると常に自己発奮し自助努力する心の態度を優先するということです。

人は誰もが目標に挑む際には、みんなそれぞれに足りない中でも必死に努力しているものです。そういう仲間や師友にめぐり会えることは稀ですがもしも得ているのならみんな自他一体の克己の勝負をそれぞれに続けているものです。誰かのどうこうではなく、自分はどうありたいかということを何よりも重んじ、自分がそうなっていくことに余念なく精進します。これが道であり、道は自分の足で歩むからこそ前進している実感があるのです。

自分の思い通りにいかないことを他人のせいにしたくはなりますが、しかし思い通りにいかないからこそ思った以上のご縁に出会える。そしてそこにはやはり自分を甘やかさない自己信頼があって同じように他人に対しても甘やかさない他己信頼があるように思います。ご縁に気づく感性というものも、この自分に正直である人でなければなかなか磨かれないように私は思います。

つまりは「自分に正直」であることこそが、何よりも「自他信頼の境地」でありそれは天に対しても誠であるという真心の実践者のことです。まさに孟子にある「仰いで天に愧じず、俯して人にはじざるは二の楽しみなり。」の嘘のない楽しい人生道場です。

自分の決めた自分の在り方に対して嘘をついたり誤魔化したり言い訳したりしないでいいように、初心で決めた実践を感謝で愉しみつつ、日々を精進していきたいと思います。