以前、ある経営者と漫画について話すことがありました。その方は、京都大学を卒業後あらゆる本を読んできたけれど「NARUTO」ほど参考になるものはなかったと仰っていたことが印象的でした。この「NARUTO」というのは週刊少年ジャンプで連載していた岸本斉史原作の忍者漫画のことです。1999年43号から2014年50号迄掲載し全700話ある少年ジャンプの看板作品です。
私も幼い頃から、少年ジャンプや少年マガジンなど漫画を読んではキャラクターに共感し、夢を見ることの大切さや仲間を思いやることの素晴らしさ、また最後まで諦めないことの重要性など、様々なキャラクターに思いを寄せて共感しては人生の要所要所で勇気と励ましをいただいたように思います。
漫画は漫画家がそれぞれの人生観に従って描き記していくものです。これは詩や文と同じく、その人の生き方をはじめ思想や哲学が入っているものだと感じます。より具体的に読みやすく解りやすく多くの人たちに影響を与えるという意味では漫画というのは素晴らしい作品であるように思います。
この「NARUTO」ですが、25年連載していく中で作者もまた25年の歳月を様々な出来事を通して学んだことが漫画にも投影されています。毎週連載をしていくというのは、毎週人生を深め高めて実践していくことに似ていますからキャラクターの成長は漫画家自身の成長でもあるように思います。
あらすじとしては、木の葉の里の忍者アカデミーという若き忍者の育成機関の生徒「うずまきナルト」がいつか木の葉の首領「火影」になることを夢見る話です。実際は弱点ばかりの落ちこぼれ忍者が、数々の出会いを試練を乗り越えて見事立派な火影忍者になるまでが描かれています。そのライバルに「うちはサスケ」という忍者もいました。何でもできて完璧な忍者でしたが、同じように火影を目指します。その火影を目指すプロセスに哲学があり、それが作品を通してあらゆる場面でぶつかり葛藤します。
うちはサスケは、「人々に選ばれた者ではなく 躊躇いなく憎しみを受け入れる事が できる者こそ火影に相応しい人物だ。」と言います。それに対してうずまきナルトは「火影になった者が皆から認められるんじゃない、皆から認められた者が火影になるんだ仲間を忘れるな。」と学びます。
自分のチカラだけを頼りに強さを求めてきたサスケに対して、周りのチカラ添えを頼りに強さを見出したナルト。本来の自立とは何か、チームワークと根性というものがナルトの強さの秘訣だと言いますがそこには仲間に対する信頼と、自分自身に負けない強さがあったように思います。
人は己に克つことをやめて強さを求めたらサスケのように孤独になります。しかし己に克ちその上で仲間を信頼することができるのなら協力できるようになります。本来、チカラを持ちたい動機は大切なものを守りたいからではありますがそのプロセスの中に自我欲に負けてしまうのか、それとも周りの役に立ちたいのかで「生き方」が出てきます。生き方が決まれば、次にその「やり方」がはっきりしてきます。そのやり方をこの「NARUTO」は皆に解りやすく伝えているように感じて共感することが多いです。
己に打ち克ち、周りを信じるということは本当の強さと優しさを兼ね備えた人としての思いやりの道です。「NARUTO」の随所では「忍道」という言い方をされますが、「道」を歩むものとしての心構えた志について描かれたシーンはどこも感動する物語ばかりです。
自分の生き方と照らしつつ、道を愉しみ道を味わい、真心や思いやりを反省しつつ子ども達と一緒に歩んでいきたいと思います。