今年は夏季実践休暇を用いて、「炭」について深めています。キッカケは、自然養鶏の発酵床や、漬物の発酵場にづくりに炭を用いたり、田畑や植物の発酵土壌づくり、最近では昆虫飼育、飼料にいたるまで炭を使ってみて効果があったことを実感したからです。また昨年から風土について深めていく中で、その土地特有の風土がその人物を醸成することを学び、私の故郷のことを考えていく中で発見があったことも要因の一つです。
私の故郷は、筑豊といい炭鉱が有名な場所です。地面には大量の石炭が埋まりその石炭が土深いところに埋まっているからです。私の育った風土が石炭に関係するのなら、「炭」に関することを学び直そうと思ったからです。何年も前から実践しようとは決めていましたが、今回の機縁に感謝しつつ取り組んでみようと思います。
そもそも炭の効果は先人たちは知っていました。中国や日本の遺跡でも大量の炭が出土しています。世界を驚かせた発掘の一つに1972年に中国で発見された2100年前の「馬王堆古墳」でその棺を開けると出てきたのはまるで数日前に死んだような貴婦人の遺体がでてきたそうです。まるで内臓もしっかりしていて胃の中にあったウリの種を土にまいたら発芽したそうです。世界の謎としてなぜミイラにもならず保存することができたのか波紋を呼びましたが棺の周囲には5トンもの炭が埋めつくされていたのが分かったそうです。発掘の際にも堀った小さな穴から有機物が分解してできたメタンガスに火をつけると青白い炎が三日三晩ずっと続けたそうです。
私がここから推察するのは、そこには確実に「発酵場」があったと確信しています。2100年間保存ができるということは、必ず其処に発酵の智慧が入っていたはずです。
他にも日本では伊勢神宮をはじめ、法隆寺、京都にある神社仏閣などもその地下に大量の炭が使われています。他にも東北の古い蔵やかつての古民家などでも壁に炭を塗り込まれていたのが多数発見されています。炭には場を清める作用があり、これは「イヤシロチ」といって清浄で澄んだ場になるという意味で、この癒白地に炭を使って浄化作用を高めたということでしょう。逆に水や空気の抜けが悪く、ジメジメとした場は「ケガレチ」といいます。ここは発酵がないような穢レ地になり、人間の生活に合わない場になっているようです。
今回、夏季実践休暇を用いて床下に700キロの備長炭を敷き詰めることにしました。この備長炭とは樫や馬目樫の木を備長窯で焼いた非常に堅い炭のことです。備長窯で焼く製炭技術は弘法大師空海が中国からもたらしたといいます。備長炭を焼く窯の小さな排気口を今でも「コウボウ穴」「ダイシ穴」といい、中国伝来の技法を紀州や土佐に伝えたのは空海に間違いないと言われています。
昨日は半日をかけて約400キロほどの備長炭を敷き詰めました。この作業自体は床下に潜り大変苦労しましたが炭の敷き詰める際の炭の音や粉に癒されます。先人たちは、きっと悠久の時間をかけて炭と共に暮らし、自然の智慧と技術を磨いてきましたからこの炭の効用を知り尽くしていたのでしょう。
なぜ炭が人間の生活と相性がいいのか、そこには私たち人間の暮らしの性質に「土と木」が入っているからでしょう悠久の時間をかけて関わってきた暮らしの智慧の一端を実感します。
「稲」に続き、「炭」は私にとっては壮大ないのちのルーツを辿るミラクルジャーニーのひとつです。
引き続き、「炭」について深めて書いてみようと思います。