背中で伝承する~本当の学び方~

子どもに限らず人は成長するとき、モデルになる人物を一つの指標にしていくものです。例えば、見た目であったとしても生き方であったとしても、自分が参考になるものをもとに見よう見まねで似せていくものです。

これらは対象物に「近づく」という言い方をしてもいいのかもしれません。

師弟関係などもそうですが、師の考え方や生き方を参考にして自分自身の何が似ていないのかに気づきます。そうやって自分が憧れた人との差異を確認しながら、薫風や薫陶を受けてそのものも変わっていくのです。

これは昔の日本では職人文化といいますが、実際には教えない教育を行うには教えないためのモデルが必要だからです。私にも同じようにメンターがいて、メンターの存在やその生き方、そういうものが自分の血肉の中に溶け込んでいます。共に憧れる生き方がある人や、同じ理念を持つ人、最終的にありたい自分を優先できる人は、自ずからベンチマーキングする人物に出会えるように思います。

人生はどこにいくかも大切ですが、誰と往くかというのはもっと大切です。

それは誰と往くかによって生き方が変わってしまうからです。

大人の背中を見せるということや、自分の生き方を遺していくこと、そして実践で示していくというのは、教科書には書かれていませんがどの子どもも、どの人間にも、大きな影響を与えるように思います。

一人ひとりの生きた背中を通して学ぶのは、本来の学び方です。先祖たちが遺してくださったものを紐解き、そこから学ぶのが本当の学び方。そして子どもたちに恥ずかしくない仕事を譲っていくのもまた今を生きる世代の役目であろうとも思います。

一人ひとりの真心の志事が、以心伝心して多くの人たちの真心になること。理念を優先して、実践を怠らないのはそれが「背中」で語ることになるからです。背中で語るのは背中で未来に向かって伝承を続けている真っ最中ということです。

正面ばかりで口八丁手八丁で理論的に説明したりするのも大切ですが、歩んだ背中には決して敵いません。

常に背中を見られているという意識を忘れず、背中で与えられる安心感を伝承できるように自分自身の学びの姿を通して子どもたちを見守っていきたいと思います。