私たちは自分のルーツを知ることで、それまでどのように生きてきたかといった歴史が辿ってきた道のりを学ぶことができます。自分の世代だけを謳歌しようといった風潮の中、本来の教育が失われてきているのではないかと思います。
日本の心や日本人の精神、それらのことを伝承されている文化や道具に触れていると本来、先祖たちがどのような生き方をしてきたかを学び直すことができます。自分の根っこを知ることは、自分がどこに根を据えていけばいいのかを学ぶことです。教育の醍醐味とは、自分が何ものなのかを知ることでもあります。そしてこれからどのように生きていけばいいのかを示す入口でもあります。
技術や能力ばかりを教え、道徳も単なる正しいことばかりを並べては良いことだと大人が子どもに一方的に押し付けてもそれで道徳観を身に付けることはないように思います。大人たちの人生観をはじめ、生き方や働き方の背中を通して子ども達は直感していきますから、自分がまず日本人になっているかということが肝要だと思います。
稲盛和夫さんの著書に「人生の王道」(日経BP社)があります。その中の教育の項目にこのように書かれます。
「一国の宰相だけでなく、私たちにもやらなければならないことがあります。「日本を知る」ということです。この国がどのようにして成り立った国なのか、我々の祖先がどういう生き様で国をつくってきたのか、素晴らしいことも過ちも自分たちの国が歩んできた道のりを知ることです。
今の教育現場は、日本という国について教えることにあまりにも腰が引けています。グローバルに生きる時代だからこそ軸足をしっかりと据えなければ、日本人は世界の中で「根なし草」になってしまいます。日本の成り立ち、特に近代になってからの世界の中における日本の位置づけを教育の現場できちんと子供たちに教えるべきです。そのうえでこれからの日本がどういう道を歩んでいったらよいのか考えるべきではないでしょうか。」
世界が一つになってきているからこそ、自分の根がどうなっているのかを知り、それぞれの民族がその風土の中でどのように生きてきたのかが重要になるのです。地球の中には、それぞれに国土というものがあります。気候や風習、そして全ての生き物がその場所に順応し、自然に沿った生き方をして個性を磨いてきました。
十羽一絡げのように、同じものが世界に溢れてもそれは多様性を発揮しているわけではありません。多様性を発揮するには、それぞれの風土で育まれた伝統と伝承、その生き方をしてきた人物が自然の智慧を存分に発揮して、他の風土と一緒一体になって新しい地球上での住み分けを考えていかなければなりません。
世界が一つになるとき、御互いを思いやり持続可能な社會を維持できるのは軸足がしっかりと日本人として根をはっているものだけが可能です。世界に出て真に活躍できうる本物の国際人物とは、単に経営が上手だから認められるのではなく、その人が日本人の心と魂を存分に発揮することができてはじめて世界から認められます。
人生の王道というものは、自分の根を掘り下げていくことだと私は思います。
掘り下げることがない人生は、まるで浮草のように流れてはどこかに消えていきます。せっかく生まれてきて一期一会の人生をいただいたのならば、自分の根を深めて自分の根からの養分で一生の花を咲かせて実をつけ種を遺していきたいものです。
日々の実践が根を深めることを助けます。
引き続き、日本の心、日本人としての生き方を学び直していきたいと思います。