漬かるということ

昨日、高菜の漬物を二樽分の塩漬けを行いました。この数日間、まず漬かるのを待ってから杉樽へ本漬けするという要領です。漬物の「漬かる」ということがどういうことか、改めて深めておこうと思います。

漬かるというのは、液体にひたるということでもあります。塩をまぶし、塩漬けすることで漬物の組織が浸透圧によって水が出て来ます。この時、塩によってカビや腐敗菌などは除菌されかわって塩に強い乳酸菌が発酵して漬物を円やかにしていくのです。

漬物は乳酸菌のお風呂に漬かることで、カビや腐敗の影響を受けなくなるのです。

言い換えれば漬物は、乳酸菌の餌であり住まいです。乳酸菌は私たちの腸内でも活発に活動しています、私たちの腸内も同じく餌があり住まいになっています。現在科学が進み、腸は第2の脳であるということまで言われています。それくらい腸内の状態は、感情を司り、免疫や生き方にまで影響を与えるという研究結果が出てきているからです。

その腸内のバランスを維持していくということが健康におおきな影響を与えます。漬物を実践してみてわかるのは、決して人間に有用なだけの微生物だけではなく同時に悪玉菌といった人間に都合が悪いのも同時に増えていきます。

漬物を漬ける人は、塩梅を確かめ発酵菌が優位になるように塩加減や漬かり加減を調整し続けなければなりません。ここに昔からの智慧があり、漬物を漬けるコツがあるのです。

おいしくて栄養価があり保存性がある漬物は、かつては縄文時代から海水に漬け込むことで発明されたのではないかとも言われます。その後は、ウリや青菜を塩漬けし大陸から味噌や酒が入り、室町には香の物と呼ばれあらゆる漬物が出て来ます。江戸時代には各家庭で様々な漬物をつくられました。

これらの漬物は、お米を主食に私たちにはとても重宝されお米で不足する栄養価はほとんど漬物で補ったほどです。保存が効き、栄養価があり、微生物を摂取でき、美味しくご飯が進む漬物は私たち日本人には切っても切れぬほどの関係です。

今のように食生活が西洋化していく中で、次第に漬物も遠ざかってきています。本来、先祖たちが何を食べてきたか、それを食歴といいますがそれが大きく変化して体調も変化してきていますが先祖代々自分たちのカラダを守ってきた漬物の智慧が失われていくのはとても残念に思います。

先祖たちの食歴、智慧を譲り遺していくためにもその風土にあった漬物を遺していきたいと思います。不思議ですが樽や甕に住み着いた微生物たちは先祖たちのカラダを潤した先祖たちそのものです。時代を超えても、漬かっているものは先祖の温かい見守りそのものかもしれません。

漬物から原点回帰し、もう一度先祖たちの真心に漬かってみたいと思います。