古民家を再生していく中で「場」について考える機会が増えています。古来より「場」というものにはチカラがあります。その場を活かして人々は神事を行い、暮らしを実現させてきました。この「場」とは何か、これから少しずつ「場」について深めていきたいと思います。
例えば、山野に行き清らかな川のせせらぎの澄んだ空気の中で休んでいるとします。その時、私たちの心は清浄な気持ちになってきます。この時、自然が私たちに働きかけるものと私たちが自然を感得していく相互作用があります。つまりその時、そこには確かな「場」が存在しているということに気づきます。
この「場」は御互いの主体的な影響力によって高められます。これはもともと其処にあったものに自分が近づいていったのか、もしくは自分の心が感応してそれを創りだしていくのか、それはお互いの結びつきや繋がりに由って変化していくものです。
さらに例えるのなら、庭をつくるときその庭に対して自分がどのように関わるか、どのように美しく育てていくかと接していけばその庭は次第に変化していきます。そして庭が変化するとき、その庭には「場」が創出されます。そこには美しく育てていく仲間が集まり、一緒に育ち合い成長をし続けて「場」のチカラを発しています。
私たちは何もなかったところに「場」を産み出します。そしてその「場」が私たちに関わり始めます。つまり環境というものは、場の働きのことであり、場が働くということは人間と環境の相互作用によって発生しているのです。この相互作用は共に働き次第に相乗効果を産み出します。
この相乗効果こそ自然界のバランスのことであり、調和はこの場の働きによって行われているのが自然なのです。自然というものを感じるとき、自然は場によって創造される調和であることに気づきます。
自然農の実践において感じるのも、自然の様々ないのちが複雑に絡み合ってその土地の風土の中で私を含め一緒一体に暮らしていく中でその人を含めた自然の田畑が出来上がっていきます。ここには人と風土の一体感の中で発生した「場」ができたのであり、自然の働きと人の働き、その相互作用によって安心安全な作物ができ、風土の他力が働き相乗効果の「場」のチカラが発揮され続けます。言い換えるのなら、生き活かされる共生の場ができるということです。
人類が今、課題になっている協働や協力、共生や自立といった社会問題のすべての課題はこの「場」のチカラによって再生も回復もできるように思います。
子ども達にどのような「場」を譲っていくか、そして私たちがどのように「場」から学び直しをしていくか、見守られてきた過去の自然や歴史を省みながら温故知新していきたいと思います。