昨日、伝統文化財なども修理できる有名な左官の親方と聴福庵の蔵の修理の件で打ち合わせをする機会がありました。古来より、日本家屋は木と紙と土など自然物を調和させこの日本の風土に適ったものを使ってきました。
特に土については高温多湿のこの日本の風土では調湿効果が高く、夏場はとても重宝します。いよいよ土を使った古民家の再生に入りますが、新たな物語が増えてくる予感にこれをどのように子どもに伝承していくかを楽しみにしています。
土壁というものは、土を壁に塗っていき独特の風情を醸し出すものです。昔の人は、季節の廻りにあわせて農繁期を終えてすぐに藁をつかい土と混ぜ発酵したもので土壁の補修を行い乾燥させて翌年にまた補正するとうように家の手入れを怠らずに大切に利用してきました。
この土というものは、空気のように当たり前すぎて気付かなくなっていますが本来私たちのカラダやいのちはすべて土から生まれて土に帰る理の中にあるものです。つまり土は万物生命の源であり、土がある御蔭でわたしたちは生きていくことができています。生き物は土から遠ざかるほどに心身が健康でいられなくなるとも言います。私たちのカラダは言い換えれば土が化けたものです。これは植物でも同じですが、土に種を蒔けばカタチになりますから土が化けているのです。その土を通して私たちがいのちに活力を与えているのは何か、それが地球の生命とつながる場所とも言えます。土から離れて生きていけるいのちはこの世には存在しないのです。
最近では西洋からの歪んだ価値観が入ってきては土を汚いと勘違いしている人が増えてきています。これこそ土に触れないことによる大弊害であり、自然農を実践すればすぐにわかりますが土の持ついのちの循環と純化、そして浄化作用というのは自然界では最上のものです。
この土を使った土壁塗りというものは、まさに日本文化の結晶であり土を何度も何度も塗りあげていくなかで私たちはその大切な日本の精神を学び直すことができるように思います。
引き続き日本の伝統的な職人の智慧に習い、暮らしの復古創新を学び直していきたいと思います。