昨日は、アイヌの祭りのカムイノミ(神への祈り)に参加してきました。あいにくの台風で拝見することができませんでしたが、その尊さと場の雰囲気を感じることができました。
この祭祀は、人々が暮らしていく上で大切なことを一週間をかけて準備して執り行われる儀礼でもあります。男性は家を守る神様としてのイナウという道具を木を削り準備していきます。女性は御酒造りをして捧げるものを用意していきます。今回は最終日のみの参加になりましたが、本来は一週間前から丁寧に真心を籠めて準備をすることが祭りそのものでもあり、御祭りとはこの神様や自然に対しての自分の心を澄ませていくための大切な期間であるのです。
アイヌではこの世にあるすべてのものは魂が宿っているとして「カムイ」(神様)であると定義しています。これは日本の神道にもある八百万の神々と同一のものです。いつも身近にはカムイが存在していて、そのカムイと相談しながら、信頼しながら、語り合い折り合いをつけながら生きてきたのです。
このカムイノミの儀式では、祭祀がまず「火のカムイ」に祈ります。アイヌにとっての火のカムイは、とても大切なカムイとされます。この火はぬくもりやあかりでいのちをあたためるだけでなく、日々の食事を手伝ってくれます。さらに人間の願い、訴えを聞いて、他のカムイへ伝えてくれると考えられているともいいます。人間の祈り言葉に足りないところがあればそれをうまく補ってくれるとも言われます。常日頃から火のカムイは私たち人間を支えてフォローしてくれている老父老母のような存在として崇め奉っているそうです。
私も囲炉裏や炭火を実践する中で、火の中の在る「ぬくもり」が心に伝承することを繋いでくれる役割を果たすような気がしていました。夜の暗闇の中に和蝋燭をつければ言葉が少なくても伝わることが感じられるのです。御互いの自然の感性に触れるためにも闇と明りをつなぐ「火のカムイ」の存在はとても大切なもののように思います。
今は電気ばかり電灯ばかりをつけていますが、いちどその電気電灯を消してみて時代を見直す必要を感じます。火の神様に見守られていることを忘れないことこそ自然と共に生きて来た先祖の真心を感じることではないかと私は思います。
最後にこのカムイノミでは祈り言葉として、人類の平和と自然への感謝、言い換えるのなら「地球にすまうあらゆるカムイ」に向けて祈りの「言葉=カムイ」が捧げられます。まるで八百万の神々に向けての自分も一体になったいのりのように私は感じます。
今回の祭りに参加してもっとも印象に遺ったのは、この祭りを主催しているアイヌの活動家、伝承者であるアシリ・レラさんの言葉です。
「アイヌは地球をカムイにしている。だから戦かう必要もなく争う必要もない。みんなそうやって仲良くしていけるといい」
何のために活動しているか、何のために伝承するのか、その真心を御縁をいただき深く感じました。
地球に生き残ってきた先住民の方々の思想は、時代の篩にかけられて永く生き遺った智慧の結晶です。この文明がたった数千年で終わったとしても、これらの先人たちが築き上げた文化は数億年の歴史をもっているかもしれません。私たちは今の文明が最先端だと視野を狭くしていますが今一度何がもっとも大切なことかを見直す必要がある様に思います。
人類が存続する鍵は、このようなもう数少ないが力強い生き方の中に遺っています。お祭りを深める最初の祭りがアイヌであったことに深く感謝しています。引き続き子ども達の未来のためにも祭りを通して大切なことを学び直し伝えていきたいと思います。