先日、郷里の許斐神社に参拝すると境内には楠木の実が大量に地面に転がっていました。楠木の巨木を見上げると荘厳で、木の実権現というように数本のご神木が参道から境内にいたるまで悠々と立ち誇っています。
この楠木の語源は、クスリノキ(薬の木)やクスシキ(奇し木)ではないかと言われます。また楠木から採取される樟脳は殺虫剤や防臭剤、香料などの効果もありその不思議で霊妙な力がある木とし古来から大切にされてきました。
薬の効果としては、消炎作用、血行促進作用や鎮痛作用、のどあめやうがい薬、歯磨きや湿布や軟膏、皮膚疾患であるニキビや湿疹、リウマチなどにも用いられます。他には防虫効果と巨材が得られるという長所から家屋や家具、飛鳥時代の仏像にも使われていたといいます。
それに船の材料として重宝されていて古代から丸木舟の材料として用いられたといいます。この郷里の飯塚市幸袋は遠賀川という川の入江があったとされ、この神社から近くにはかつては長崎街道の船場がありました。きっと古墳時代にはこの山に大量の食用の木の実が取れいのちを守り、その後も船の材料や薬として杜の木々が生活を助けてくれていたように思います。
それにここは幸袋と呼ばれるずっと以前は王谷郷と呼ばれ沢山の古墳や遺跡がこの地域から発掘されています。つまり古墳時代の人々は土器で煮炊きし、どんぐりやクリ、クルミなどの木の実を石皿で砕いてつくったものを主食に、野山で獲ったシカやウサギ、食べられる草やきのこ、川で取った魚や貝をおかずにしていたのでしょう。
これはこの地域が昔から暮らしやすかったことの証明であり、その時代から様々な文化を形成して今があるということです。神社の由緒や由来、またその立地や地域の風土を観察していると先祖たちの息吹が聴こえてきます。
引き続き、地域の自信と誇りを取り戻すとはどういうことか、引き続きその原点や持ち味から学び直してみたいと思います。