家というものを考えるとき、民家とは何かとそれを大きく観てみると一つの考えが出てきます。その考えは木々や植物のようにその土地に根付いているということです。
本来、家は動くものではありません。その土地に根付き、その土地の上に建ち、その土地に息づいていきます。その土地にあるものを私たちは故郷といい、懐かしくそこにいるだけで不思議と落ち着きます。
古民家甦生を実践していると、樹齢の長い大樹の存在を身近に感じます。
大樹は土の中でしっかりと根を張り、土の中に様々な菌類や虫たちの家を形成します。長い年月をかけてつくられたその土中の家はまるで生き物たちの楽園になります。生き物を守り育て、その生き物が何度も何世代もいのちの廻りを繰り返せる場所、それが本来の家の役割でした。
今の家は果たして本来の家を為しているのでしょうか?
私たちは自然の生き物から家を学びました、その家はその風土と密接であるのは土の中とつながっているからです。最初の竪穴式住居にはじまり日本建築はすべて土と密接に関係しています。
日本人のアイデンティティが失われてきているといわれる昨今、本来の家とは何かということをもう一度考え直す時機が来ているように私は思います。
民族の家、その民家には永年大切に守られてきた暮らしがあります。その暮らしは、風土の教えや風土のいのちと切り離されることはありません。
すべての生き物たちの家を保証する上にはじめて本来の家があることを忘れてはいけません。
引き続き、本来の家の形を学び直していきたいと思います。