昨日のニュースで盤上ゲームの中で最も戦略的とされる囲碁を打つために開発されたGoogleの人工知能Alpha Goのことが紹介されていました。
中国で世界最高レベルの打ち手をことごとく破って最後は世界トップランクの天才棋士柯潔を完璧に破り人工知能Alpha Goは正式に囲碁から引退するという報道でした。
ボードゲームの中でもっとも複雑だとされる中国4000年の歴史がある囲碁にチャレンジすることで人工知能Alpha Goは「人間を超えるために10年かかる」と言われていたものをここ1年、2年で追いついてきたことになります。
この人工知能Alpha Goを開発したロンドンの会社DeepMindの理念は「人間の知性を解明する」ことであり、囲碁で得たこの技術をさらに発展させ応用し他分野に進出していくということです。
印象的だったのは試合後の記者会見で天才棋士柯潔が「AlphaGoは世界を変えてしまったが、ぼくはぼく自身でありたい。そして囲碁が楽しいことを伝えたい。その責任がある」と語っていたことと、「AlphaGoの打ち手は、まるで人間のようだった」という言葉です。
ここから相手のことを読み、学びそして判断していく技術、さらにそれを裏付ける知能、もうすでに知能技術はほとんど人間に近づき人間を凌駕したことに気づきます。100年前なら想像すらできないことを今はほとんど実現可能なところに来ています。
人類はこの人工知能、つまりは知識の技術においてついにほとんど完璧に近づいた存在を目にすることになったともいえます。そしてその時、私たちはどうするかということも同時に向き合う必要が出てきます。
かつては人間の作りだしたものが人間を超えるはずがないという先入観もあったかもしれません。しかし実際は、人間の作り出したものが人間の手を離れ人間を大きく超えていく時代に入ってきたのです。
それぞれに意思を持つ人工知能は、私たちが努力して必死に技術を磨いていてもそれをあっという間に獲得して私たち以上の完璧なものに仕上げていきます。どう考えても人間が作ったものよりも良いと判断されたら私たちはその時、どのような世界を生きていくのでしょうか。
私にとってはこの対局や人工知能の存在が、改めて文化と文明について人類に本質を迫ってくるように思います。私の場合は楽観的に考えますから改めて人類の文化の価値が見直されるのではないかと思っています。
人々が長い年月で得たもの、囲碁であれば4000年の歴史は勝ち負けとは離れたところに生き続けているものです。人類とは何か、それは歴史です。いくら技術が進んで人間をすべてにおいて凌駕したにせよ、進歩は進化を超えることはないように思います。
なぜならその進歩もまた進化の一因でしかないからです。
だからこそ大切なのは、一人ひとりが今を大切に進化を已めずに成長を続けていくということです。引き続き大切なものを守りながら変えていくものは変えていく、その世代の責任と使命を感じながら命を尽くし温故知新を進めていきたいと思います。