水神様

昨日は聴福庵の井戸堀りを一緒に手伝ってくださっている井戸掘り職人さんと井戸に入り手掘りで掘りこみました。もう井戸は約6メートル来ましたが、残り30センチで仕上げをするために手掘りを続けています。

ポンプで水をあげながら掘り進めるのですが井戸穴がかなり狭くほんの小さな隙間から砂利を上げていきます。井戸の水量が大変多いためポンプの容量がいっぱいでも水位があまり下がらず太腿まで水が浸かる中で掘るために全身びしょぬれになります。

また現在の砂利は赤っぽく、今までに見たことがないような色合いのものですが井戸職人さんにお話をお聴きするとこれは川砂利といって川の底にある砂利が出てきているそうです。もう相当な昔にあった川砂利が、地下水脈で浄化され綺麗に光っている様子に心が洗われる思いがしました。キラキラと輝く石たちは、地下に綺麗な水が流れ続けていることを証明しています。

この地下水脈の水は、自然の水ですから渇水時期には水位は下がり、水が豊富な時期には水位が上がります。なのでその上がり下がりがあっても水が溜まっているように渇水時期に合わせて掘り進めなければなりません。

自然や地球環境は、私たちが思っていないところで大きく地下でも変動しています。そう思えば、地球環境は上空や地上だけではなく常に密接に地下ともつながっていて自然の生物たちはその変化の中で順応して生きているとも言えます。

昔の人たちは、この地下水の存在を知っており、ここに冷たくきれいな水があることを知っていました。井戸から湧き出てくる水は、滾々と湧きあがり心身を澄ませてくれます。

人生の中で、水のカミに出会う機会は美しい滝や湧水、清流などで感じたことがありましたがこの地下から湧き出してくる水のカミとの出会いは人生ではじめての体験になりました。

太古の昔から、人々が地下の水神様とお祀りする意味が、今回の手掘りの井戸掘りではじめて理解することができました。

竈で火そのものを崇めるように、井戸で水そのものを崇め奉るということ。その火、水そのものの精霊の御蔭様で私たちは生かされていることを忘れないという感謝の心です。

地下水脈に流れる水によって禊をし、龍神様を感じて生きていくというのは私たちの先祖が代々大切にしてきた農的な暮らし方です。自然農の時も、一人で野に立ち最初の一鍬からはじまりましたが、今回の井戸も一人で水中に立ち最初の一掘りからはじまります。

人々の心の荒蕪を心田を耕すように、水田も掘っていこうと思います。

引き続き、初心を忘れずにあらゆる存在に感謝しながら精進していきたいと思います。