昨日は、引き続き土葺きでの瓦葺きを行いましたが土の吸着力のみで瓦は葺かれていきます。私たちの先祖は、土の持つ性質を巧みに活かし、土をあらゆるところで活用してきました。家においては、土壁であったり瓦であったり、また竈であったり、土鍋や食器だったりと土はあらゆるところで私たちの暮らしを支えてきました。
現代ではあまり土に触れることもなく、土は汚いと嫌悪されることが増えてきましたがずっと長い間、私たちの命を守る大切なパートナーでした。土は汚いものではなく、ありとあらゆるものを浄化する清らかなものです。どんなものでも土に埋めれば時間がかかりますが必ず分解されまた循環の一部に回帰してくれます。土は、甦生の代名詞であり、土はどんなものにも姿かたちを変え、そして何回も何回も新しく生まれ変わります。
世界では土で作った建築は無数にありますが、私たちの日本では高温多湿の気候と自然の水気の多い瑞々しい土の建築があります。基本的には日本の家の中心は木を用いますが、その木を活かすのは土であり、土を活かすのは木です。さらには、紙や石など日本の風土に適ったもので構成されます。
幼いころ、三匹の子豚の寓話でレンガ造りの家だけが狼から守ったという本を読みました。しかし大人になって日本建築に触れてみるとその逆で頑強な家よりも柔弱の家の方が、そこに住む家人たちを守り、末永く住み続けられる仕組みがあることを知りました。
柔弱とは和かいということです。
この和の家は、自然災害が起きたとき真っ先にそれぞれの土や木や紙が自らが先に壊れ合ってしなやかに周りの損壊を防ぎます。自分だけを守ろうとするのではなく、自分の方が周りのために少し崩れることで周囲を助け守ります。
これはまるで日本的な生き方のようであり、日本建築や家にはその日本の精神が凝縮されていることに気づきます。当然のことですが、日本人が建てたからこうなったのであり、日本人が考えたからこうなったのです。
私たちは家に住むことで教えられるのは、どのように先祖が生きてきたか、何を大切に暮らしてきたか、どんなことを理想としてきたかに気づきます。
今回の土葺きでいえば、瓦は土に載せているだけで、瓦自体は一切どこにも固定していません。瓦と土が載ることでかなりの重量が屋根にかかりますが、その御蔭で地震が発生したときに建物が左右に大きく揺れていきます。その揺れ幅が大きければ大きいほど、家が倒壊するより先に瓦が先にずれ落ちることで家を守ります。
今のように修理する気のない家であれば、全部捨ててやり直しですが古来の日本の家は傾くだけならすぐに元に戻せましたし、土葺きの土も再利用できます。そうやって自然災害を体験し何度も改善を繰り返し、悠久の年月を持たせることができる家に昇華してきたのでしょう。
この体験も未来の子どもたちに譲り遺せるように真摯に学び直していきたいと思います。