能力の本質2~役に立てること~

「人はどういうときに喜び、幸せを感じるのか、人から愛されること、人にほめられること、ひとの役に立つこと、そして、人から必要とされること、これは、人間の究極の4つの幸せです。」

これは、日本理化学工業を見学した際に大山会長から「働く幸せ」について教わった内容です。

そして「働く場である企業だからこそ、君がいて助かったよ、ありがとう、また頼むね、という言葉が自然とでるのだと思います。人間誰しも持っているという、人の役に立つことが幸せだと感じる脳、「共感脳」が、人に役に立ったときに満たされる、幸せだと感じられる、まさに、自分の存在を確認できるからなのでしょう。世のため、人のためというと大げさになりますが、人間だからこそ、このように素晴らしい能力を持てるわけで、本当にありがたいと思います。」と続きます。

この「役に立つ幸せ」は、人間だからこそある素晴らしい「能力」だと言います。能力があるからその人は役に立つのではなく、その前の段階でその人は役に立ちたいことが能力であると定義されているのです。これは何よりも大切なことだと思います。

自分の能力を技能や知識だと思い込んでいる人は、自分が失敗しそうなことやできそうにないことには手を出しません。自分が向いている組織に属せば役に立つところがたくさんあるのかもしれませんがそうではない組織に属せば無力感を感じて腐ったりもします。しかし実際は、向き不向きではなく役に立とうという気持ちさえあればどんな小さなことでもできることで役に立っていけば相手や周囲から「ありがとう」という感謝をもらえ幸せを感じるのです。

本来、働くことは幸せであり、幸せは働くことで得られます。それを勘違いして評価されるために、自分が認められたいために、もしくは周りにいい人だと思われたいためになど、自分自身の価値を証明させたいために働けば不幸を感じるようになるのです。自分の能力が活かせないといくら愚痴をいったり、自分は何もできないなどと諦めてじっとしていたりして働くことが次第に面白くなくなってきます。

働くことが楽しい人は、どんなことでも役に立ったと思えば仕合せを感じるものです。自分が相手のためにできることを自分ができることでなんでもやっているうちに相手から感謝されるのが嬉しくなるからです。

みんなが楽しく仕合せに働く組織は「ありがとう」という言葉がたくさん飛び交います。なんでも役に立つことをしていこうという気持ちが溢れるからです。本来、仕事とは何かとシンプルに言えば誰かの「役に立つ」ことでしょう。自分が役に立っているかどうかを考えて悩むよりも、「ありがとう」と言われるような働き方を工夫した方がいいということでしょう。

ありがとうと言われる働き方は、相手を思いやり自分が手伝いたい力になりたいと何でも取り組んでいくことです。できることはなんでもやるということでもあり、できないことでも何か力になれないかと努力することです。

そうやって何かで役に立ちたいという思いがあれば、きっと人はその人のことを嫌いになることはありません。最初は下手で迷惑をかけるかもしれませんが、それでも何か力になりたいと思えばそのうちに上手になってきます。本来の人間の能力とは、役に立ちたいと思うことで磨かれていくものです。つまりは能力とは、役に立つ能力を得るということです。そしていくら能力があってもそれが役に立たないのは本当は能力ではないということです。

能力=役に立つことであり、役に立つ能力こそが本来の能力の意味なのです。そうなるとその人が役に立てるように周りも気にかけて配慮したり、その人がさらに役に立てるように協働したり、お互いに役に立てるように働くことが幸せを創造していくように思います。

何かの能力さえつければ誰かの役に立つという刷り込みを取り払い、本来の取り組みの順番を間違えないようにすることです、できないことばかりを追い求めず、できるところからみんなの役に立てるようにすることが能力、つまりは自分も「人の役に立ちたい」という能力を持っていることを信じることです。能力を無理に活かそうとする苦しい生き方ではなく、役に立てるのなら何でもやるという生き方の方がしなやかで楽しい生き方です。

最後に大山会長の言葉です。

「働くことが幸せということを前提にしたら、世の中はもっと良くなる」

役に立てることが幸せということを前提にして、能力を持てば幸せという刷り込みを捨てれば世の中は本当に豊かになると私も思います。みんなが安心して役に立てる歓びを感じられる組織を広げていきたいと思います。