煤祓い

昨日は、12月13日の正月事始めとして聴福庵の煤払いを行いました。むかしは囲炉裏や竈、七輪や薪のお風呂など火を使うものが多かったことから大量の煤が生活道具や家具についていました。その煤汚れなどを掃除し、間もなく訪れる正月に合わせて歳神様やご先祖様が清浄な家に帰ってこられるのを待つ心で洗い清めるためのお掃除です。今では家電製品が中心ですから大掃除くらいのイメージですが、この煤払いは単なる大掃除という意味ではなく大切な日本の伝統的な暮らしの年中行事の一つです。

この煤払いを調べると平安時代にはすでに行われていたとあります。もう1000年以上前から行われている習慣だと思うと、身体は知らず知らずにそれを覚えているのかもしれません。この12月13日に行うようになったのは江戸時代からだといい、江戸城に合わせて町人たちも13日を煤払いの日にしていたといいます。

正月を迎える物忌みの始まるのが13日で、28日までに掃き清めを行い歳神様の正月を迎えるための信仰の一環としてこの日を煤払いにしたといいます。むかしの人たちは一気に大掃除ではなく、時間をかけてじっくりと丁寧に掃き清めながら一年の煤を払ったのです。

掃除に使われた道具も、むかしはお焚きあげをして一緒に供養したとあります。ここには一年、生活の中で出た穢れを払いながらもその働きやいのちに感謝の心で供養していくという生き方があります。そして一年一年と積み重ねていくいのちの暮らしがあって、その一年の節目を大切に振り返りながら翌年を迎えていこうとする慎む心が観えてきます。

そう考えてみると、この一年もまたいろいろな煤が出た一年だったなと思います。

その煤を思い返しながら、暮らしを見つめ暮らしを味わう。その中で出てくる錆のようなものを綺麗に拭きとりまた美しい本体を顕していこうとする。祓うことで観えてくるといったまさに魂を磨く一つの生き方伝承行事なのです。

日本ではこの「お祓い」を暮らしの中で大切に位置づけていたように思います。穢れは歳月の中で次第に出てくるものだからこそ、それを日々に手入れをして美しく磨いていこうとしたのでしょう。歳神様というものは、清浄なところにお越しになるというのはこの初心をもっている方だからかもしれません。

一年で一つの四季が巡ります。

また新しい四季が巡るときに、初心に帰り初心を忘れないで歩んでこれたかと思い返し一生を磨き続けていきます。日本人の清々しさ、根の明るさはこの年中行事が助けてくれていたのかもしれません。

暮らしを甦生しながら、子どもたちに伝承していきたいものを譲り渡していきたいと思います。