古民家甦生に取り組んでいると、建物の生命力というものをよく感じます。長い時間をかけて様々な災害を乗り越え今でも建っている建物には威厳と誇りも感じます。
現在では、建物は生命力よりも見た目のカッコよさや派手さまた流行りの美しさなどが人気があります。しかし古民家にはそういうものはなくても、自然本来の持つ美しさや生命力、そして文化があります。
長い年月の空き家などで傷んでしまっている家を見ることもありますが、たとえ今、誰かが住んでおらずに哀れな状態になっていたとしてもしっかりと手入れをし補強、改修、修繕をすれば、親世代、子世代、孫世代、さらにその先々までずっと住み継ぐことができます。
この住み継ぐということがいのちの循環を支え、持続可能な風土を実現させていくのです。
例えば、古民家には傾きというものがあります。現在のプレカット工法では、コンクリートの基礎の上にプラモデルを組み立てるように先に機械で設計をしてそのまま組み立てます。しかしむかしの工法は、固めの地盤に石を置くだけのものでした。そのため、何百年もたてば次第に沈んでいき傾きも出てくるのです。
現代工法は、数十年で壊して建て替えるように作られていますから傾きの心配はありません。しかしかつての古民家のように住み継ぐものは、何百年も建っている必要がありますから傾くことが前提で大工棟梁が木組みを考えて建てています。
昨年も、300年以上の古民家をいくつか見ましたが傾きがあっても安定し、かえって傾きがあることで地震や災害に強くなっていることも知りました。人間の体のように歳をとれば、次第に体も傾いてきます。しかし、その傾きもまた年齢の傾きでありそれでもしっかりと体は自分を支えています。
人間の体も建物と同じです。手入れや補強をしながら、生命力を伸ばし、自然の智慧や恩恵が働くようにその住まいを整えていくのです。
家も体も元は同じ、その中で私たちは住まう=暮らすのです。
暮らしの甦生というのは、住まいの甦生でもあります。それは単なる見た目だけの変化をするのではなく、生き方が変化していくことなのです。暮らしが変わるということは、生き方が変わるということです。自然と共生し新たな時代を共創することが、暮らしを甦生していくことです。
引き続き、古民家甦生を通して子どもたちが安心して暮らしていける世の中に貢献していけるように学び続けていきたいと思います。