共生の伝道

私たちの先祖は自然との共生の中でいのちを繋いできました。共生というのは、一緒に生きるということでありすべてのいのちと共に生きていく道を模索するということでもあります。

人間は人間中心の世の中にしていく過程で、様々なものを排除していきました。そのうち自分の都合の悪いものはすべて取り除いていくという具合に人間優先の世界に換えていきました。

しかし現代の様相をみてもわかる通り、殺菌や滅菌ですべて取り除こうとして耐性菌ができてそれがさらに人類を追い詰めたり、農薬などで殺虫することでさらなる別の害虫や問題を、気候変動などの原因ばかりを増やしています。

これだけ排除することが如何に問題なのかということを自然に見せつけられてもさらにそれをいつまでも已めようとはせずに排除し続け共生しようとはしない。ここに人間の本当の問題があるように私は思えるのです。

現在のコロナウイルスの件も、今回のことから人類は何を学び直すべきなのか。そして如何に今の自分たちが大切なことを見失っているのか、そして先人たちの智慧や歴史から何を正していくのか、そういうものを世界のリーダーたちは正対し話し合っていく必要を感じます。

私は日本からはこの共生の智慧を世界に発信し直していくことだと感じています。日本人は、自然と共生していくなかで万物との折り合いをつけていく間合いや場づくり、そして和などの叡智を自然から獲得していきました。

自然から乖離して遠ざけて拒絶するのではなく、自然と絶妙な距離感でお互いに折り合いと距離を保ちながら共に尊敬し合って暮らしていくということ。ここが人類がこれからも永続してこの地球で生きていく上で必要不可欠なことであることを伝えていくのです。

先祖たちは過去の歴史の中で何度も何度も、絶滅の危機を体験してきました。その中で、どのようにすれば長くこの地球に存在して暮らしを営んでいくかをあらゆることの体験を通して「暮らし」に注力していきました。

それが長い目で観て、そして全体的に観て、地球にとっても善いことになっていくこっとを言葉にせずとも暮らしを使って伝承してきたのです。それを欧米の文化が流入し、文明を優先してきたことで消えかけてきています。

まさに今こそ、暮らしを甦生し、日本人としての智慧を世界に伝える時機だと私は思います。徳積財団もまた、そのために設立したものであり、気づいた人たちが手と手を取り合って世界に発信していく必要を感じます。

智慧者のリーダーたち、今こそ、それぞれの場で立ち上がってもらいたいと思います。そして人々は気づいてほしいと思います、今しかなく、ここが時代の分水嶺です。

宗教といわれても、変人といわれても、子どもたちの未来のために当たり前に気づいたことを当たり前に言葉にして伝えていくことが今は大切だと私は思います。自分にできることを、真摯に取り組んでいきたいと思います。