昨日、あるご縁から仏教の伝来と共に日本に入ってきた「仏説温室洗浴衆僧経」というお経があることを知りました。これは仏陀が沐浴の功徳を説いたもので、これがのちに日本の文化と融合し発展を続けて今の日本伝統の湯浴み文化に繋がっていることを知りました。
以前、深めた時には重源上人が石風呂をつくったことが調べて書きましたが確かになぜお寺で温浴をここまで弘めていくのだろうかということに気づいていませんでしたがそれはお経によってその意味や価値が明確だったことに改めて気づきました。
この「仏説温室洗浴衆僧経」をさらに深めてみようと思います。
このお経には、温浴には7つの道具、7つの福徳があると記されています。具体的な7つの道具とは、『「然火」(ねんか)=薪や炭、「浄水」(じょうすい)=清浄な水 、澡豆(そうず)=豆類で作った洗顔用の洗い粉のことで洗剤や石鹸のようなもの、「蘇膏」(そこう)…樹脂や牛、羊の脂から作った皮膚をすべすべにする栄養クリーム。「淳灰」(じゅんかい)=樹木の灰汁のことで洗髪する洗剤のようなもの、「楊枝」(ようじ)=楊柳の枝をほぐした今でいう歯ブラシのようなもの、「内衣」(ないい)=浴衣やタオルのようなもの。』の7つを指しました。
そしてこれらの功徳としては、・四大(地・水・火・風の体の構成元素)が安隠となり。 ・風邪のように痺れや痛みが移動する病が治る。 ・湿気の高まりでうずく病が癒される。 ・寒さを起因とする病、冷え性などが治る。 ・熱が下がる。 ・垢が除かれ清潔になる。 ・心身が軽くなり、目がはっきりする。といわれます。
仏教のこの沐浴の功徳によって以上の7つの病気が治ると信じられてきたのです。その功徳を施すために僧侶たちは、自らを清めるだけなく民衆に沐浴の場を設け、修行の一環としてそれを手伝うための「功徳湯」というものが誕生したのです。東大寺の大湯屋もまたその一つであり、重源上人の石湯もまたその一つです。
日本人はもともと神道に穢れを祓い清める思想がありますから、この仏教伝来のお経のこともすぐに理解していきました。空海が、全国各地に温泉を開きその功徳によって穢れを祓うことを進めたのもまたこの日本の伝統文化の融合のように思います。
それからこの水蒸気による温室と水や湯で洗う浴室という二つの仕組みは、世の中の人々の荒んだ心や穢れや体の病を払うための功徳になってどの時代も効果を発揮していくのです。
私が創造した祐徳大湯殿もまたこの功徳湯を施すためのものです。人々の荒んだ心が癒され、暮らしから遠ざかった人たちが元の元気な姿、心安らかな豊かで安寧の時間を過ごし本来の人間らしいゆとりや余裕を持てるようにと場を整えるためのものです。
今の時代、本当に変革すべきは暮らし方であるのは自明の理です。人間の徳を顕すためには功徳の支援が必要です。あの時代は、僧侶が行っていましたが今の時代は徳を積みたいという方々によってそれが行われていくはずです。
子どもたちに日本人としての心穏やかな暮らしがいつまでも伝承されていくように私ができることをゆっくり急いで展開していきたいと思います。