味噌から学び直す

毎年味噌をつくっていますが、味噌の魅力を再認識することばかりです。味噌は、不思議で同じ材料と素材をつかってつくってもその家家によって味が全く変わっていくといいます。

その家の味が出るということです。それはなぜかと少し考えてみると、味噌が生きているからであり、その生きている菌がその家のあらゆる空気や場の雰囲気で変化しているということです。

つまり環境の影響を受けて、そのものが育っているということの証明です。

私が「場」の話をするとき、この麹菌や味噌の話をすることが多いのはそれだけ環境が大切であるということを伝えるからです。

手前味噌の話ですが、うちの場合は敢えて人の足音が聞こえるところや人の声がたくさん聴こえる場所に味噌樽を置いて熟成させます。むかしは、囲炉裏の近くが善い味噌ができたと文献で読んだことがあります。

麹菌は灰を食べることも知られており、竈や囲炉裏の近くで遠赤外線を浴びたり、灰を食べたり、また一緒にご飯を食べるところの環境にいれば味噌もそれに合わせて美味しくなっていったのでしょう。

この一見、非科学的な事実ですが味噌は真実を語ります。私たちの体内にいるものも同様に菌でできています。その菌がどのような環境の中に居ることが善く育つのか、それは環境が影響を与えていることがわかります。

人間を善くする菌が元氣になるような環境があるのなら、それは居心地が善い場が生まれているということです。逆に、味噌も菌も育たない環境であれば人間にとってもよくないということです。

以前、都会のマンションの中で靴箱の中で味噌樽をつくったことがあります。その時は、味噌に黒カビが出てきて味も全く美味しくありませんでした。他にもいろいろな場所で試しましたが、実家や古民家でつくるようにはなりません。

一見、快適で便利にみえるマンションの中ですが菌にとっては善い環境ではないということです。私たちの生活の場を決めるのに、菌と対話するというのは大切なことです。現在は、なんでも除菌や滅菌などをしますが果たしてそれらは本質的に環境を考えるきっかけになるのでしょうか。

味噌ひとつとっても、私たちは長い年月菌と共生してきたことがわかります。健康であること、居心地がいいこと、発酵すること、これらは人生を豊かにするための大切な要素の一つです。

子どもたちに遺したい暮らしの中に、菌との共生は必須項目です。味噌から学び直していきたいと思います。