味噌汁~時の味わい~

昨日は、久しぶりに味噌づくりの体験のお手伝いをする機会がありました。思い返せば、最初に味噌を自作したのはもう15年以上前だったようにも思います。子どもたちと一緒に熱々の大豆を手ですり潰していく作業が思い出に残っています。

大豆を育てるのも一苦労で、簡単そうで大量となるとなかなか育ちません。育たない理由は大豆になる前の枝豆が美味しすぎてそこで収穫したり人に配ったりしてしまうこともありますが。

昔の人たちは味噌をつくるために、大豆もたくさん育てていたのだろうと思うと懐かしいものを感じます。そのすり潰した大豆に麹菌を混ぜて塩を足し発酵させていくと味噌になりますがこの変化を楽しむこともまた味噌の醍醐味です。

私は発酵は木樽にこだわっています。その理由は、木樽は呼吸をしていて水分量を調整してくれます。プラスチックだと水分の調整が難しく、水がうまく抜けません。適正水分を保つというのは、どの生き物においても重要なことです。私たちのいのちは水でできていますから、この水との調和がいのちを適切に育むからです。

水と塩、まさに海ですが地球を保つ仕組みと私たちの身体や食物のいのちもまた同じ仕組みで構成されているのです。

そしてこの発酵というものは、まさに代々を継いで円熟していく「時の美味しさ」というものが入っています。味付けというのは単にその時の組み合わせだけではなく、それまでかけてきた時間や歴史も味になっているのです。

特にこの「味噌汁」は、日本人は1200年くらい前から私たちのいのちの健康を支えてきた食べ物です。私たちが味噌汁を食べるとき、それは単に組み合わせの美味しさだけではなくこの時の美味しさも感じています。懐かし味の代表はこの味噌汁でもあるのです。

保存に適し、麹菌をベースにあらゆる腸内細菌との調和をはかり食べ物をうまく包み込み美味しく仕上げていく。少し大げさかもしれませんが味噌汁の御蔭で私たち日本人は、この高温多湿の風土の中でも健やかに暮らしを営んでいくことができてきたように思います。

昨日は手作りの真心籠った味噌汁に竈と備長炭で炊いた自家製の無肥料無農薬の玄米ご飯に野菜の味噌漬物の一汁一菜を、子どもたちも一緒に懐かしい藁ぶきの百姓古民家で深く味わいました。本当に日本人に生まれてきてよかったと思う瞬間の一つです。

時を感じるというのは、自分たちが「ここで生まれてきて善かったと感じる瞬間を味わっている」ということでしょう。できれば、未来までずっとこの瞬間が子どもたちに伝承していけるように私のやるべきことをやり遂げてこの世を去りたいと思います。

貴重な一期一会の時間をありがとうございました。