現在は、様々な法律があります。その法律は人々を守るためでもありますが、むかしから行われている目には見えませんが非常に効果がある伝統や仕組みに対しては効果を失わせてしまうものもあります。
私は古民家を甦生していますが、建築基準法の法律に合わせることでかえって古民家の善さを破壊してしまうという現場をたくさん見てきました。現代の建築に合わせた法律であるがゆえに新築が基準になっており伝統的な古民家には合わないつくりになっているからです。
例えば、今はべた基礎といってセメントをいれるのが当たり前ですが古民家は土の上に石が乗っているだけです。これを全部セメントすると場所によっては湿気がかえって溜まりやすくなったり風水を度外視したことで様々な家に問題が発生することもあります。部分最適ではなく、全体最適でむかしの人は家を建てたのでそれを法律に合わせたことでかえって家の健康を損なってしまうという具合です。
他にも薬事法によって民間療法で効果があるものが禁止されたり、衛生法などで発酵や酵母菌などが使えなくなったり、その地域の文化や祭祀、宗教や祈祷なども法律がありできなくなったところもあります。
本来は、全国一律で一斉に同じことをして守るということに無理があります。それぞれの地域にはそれぞれの風土で発見されたり発明されたものがあり、それを尊重しながら善いものを口伝あるいは実践によって伝承されてきました。
さらには、いまだ科学で証明されていないような不思議なものなどもむかしは当たり前に善いものは善いと取り入れていましたから自然に取り組んできた文化もあります。そのうち量子力学をはじめ新たな科学でその存在が実証されたとき、あれを遺しておけばよかったとか、捨てなければよかったとか、法律を書き直すなどということも出てくるのでしょう。
大事なのは、尊重していくことで本物だとわかるものをみんなで学び気づきそこから選択をできるようにしていくことだと私は思います。
もともと徳積循環の中には、そうやって目には見えないものでも効果があるというものをみんなで守っていこうというもんがあります。英彦山でいえば、薬草の知恵であったり、山での修行の知恵であったり、他にも座禅や祈り、暮らしの知恵もあります。こういうものは法律で認められないからと禁止するのではなく、それぞれが自分で体験していいと思えばそれをみんなで守っていこうとするのは伝承の知恵です。
伝承の知恵をつかうために、徳積帳もありそれをみんなで活用することでさらに知恵が積み重なり徳も弘がります。
時代的に難しいものもありますが、むかしから大切だといわれたことはそのまま守りながら新しい時代のテクノロジーの力を借りて子どもたちに知恵を伝道していきたいと思います。