原風景と原風土

私たちが産まれ育った風土や風景というものは、自分の価値観にとても大きな影響を与えるものです。特に、故郷の山、あるいは川にはじまり歴史的な建物や農作物なども同様に自分というものを形成します。

私たちはその土地が産み出したものですが、日ごろはあまり気にしないものです。しかし、大海原の小さな島で産まれ育った人や人里離れた山奥の奥地で産まれ育った人はその感性や感受性、道理の理解や直観などもその影響を受けています。

そしてその後は、また新たな風土や風景に出会い少しずつまた価値観が影響を受け変化していきます。どういう変化かといえば、自分の中にある風景や風土が地図のように広がって繋がり結ばれていくのです。ぼんやりとしか見えなかったものがクリアになっていくように明瞭になっていきます。

そう考えてみると、人間は本来はすべてを知覚していてその場所やその機会に触れることで自分の中のイメージを鮮明にしているものかもしれません。戸が開かれていくように、隠れたものを探し出すように、あるいは霧が晴れていくのを待つように体験していくのです。

旅路というものも同じく、自分が旅をするなかで出会うものによって世界や価値観が変化していくように心の風土や風景も変化していきます。自分の観たかった景色、あるは自分の信じた景色、またあるいは心に焼き付いている懐かしい景色を求めていくのです。

人生の旅路というものは、結果よりも道のりに好奇心があるものです。

今度はどのような風土や風景に出会うのか、それがワクワクするから人はまた道を歩んでいきます。どうしても出会いたいと思うほどに旅は続きます。風景や風土に見守られていることを忘れていない人は、心にふるさとを持っているものです。そのふるさとは、原風土や原風景といい、自分の旅の出発点のことかもしれません。

はじまりがどこであったか、その結び目はどこからだったか。それはあまり自覚していませんがとても大事な自分の天命を宿しているようにも思います。旅はそれを思い出す機会にもなります。

価値観の地図はどのようになっているのか。

みんなで地図を語り合い聴き合い、新しい地図を調和させ未来の原風景や原風土を守っていきたいと思います。