現代というのは人が中心の世の中になっています。しかし実際には、この世界には人だけではなくあらゆるものが存在しています。そこには動植物だけでなく、無機質だといわれる物体にいたるまでいのちがあり同時に歴史があり今も続いています。そういうものへの配慮を忘れると人間中心の世の中がますます増大していきます。環境破壊も、伝統文化の荒廃も人間が人間を優先しすぎるところから始まっているようにも思います。
例えば、身近にある物というものも本来はそれは物ではありません。原材料や素材があり、それを大切に加工して私たちはそれを活用します。そこには多くの犠牲があり、いのちが使われます。残ったいのちを別のカタチになってそこからさらに生きるのです。
これを私は甦生とも呼びます。
甦生というものは、常にいのちのお手入れが必要になります。これは修繕ともいえるし、配慮し大切に扱うということでもあります。時間が経てば、自然の変化に合わせて経年変化します。味わい深い変化もありますが、変化に耐えられなく傷んでしまうものもあります。それをお手入れすることで、その傷みを修復したり回復を見守ったりするのです。
これは人間の身体も同じように自然物ですから、お手入れが必要であるようにすべてのいのちやものにも必要なことです。お手入れというのは、糸を結び直すことに似ています。切れそうな糸を解き、また新たな糸で結び直すこと。何度も結び直すうちに、いつまでもお互いのつながりが築かれていくのです。
いのちというものは、こういう連綿と続いてきた糸のようなものです。その糸をどう結んでいくかは、日々のご縁の結い方次第です。
暮らしとは、その日々をどう紡いでいくのかということですからあまり絡まりあわないように慌てず焦らず、丁寧に丹誠を籠めて繕っていきたいと思います。