カビとの折り合い

長雨が続くと、古民家ではカビが発生してきます。カビといってもあらゆる種類のカビがあり、目に見えるものには青カビ、黒カビ、白カビ、赤カビ、緑カビといってそれぞれの場所にコロニーをつくって生存します。自然界の中には、いつも浮遊していて湿度や温度、栄養があればそこにコロニーをつくって大繁殖します。

これはシロアリなども同じで、エサが大量にあるとわかればそこに巣をつくり大繁殖していきます。シロアリも、湿気と温度と、栄養になる餌が揃えばやってきます。

逆にいえば、これらの湿気と温度と栄養のどれだかがなければそこにはコロニーをつくることはありません。それを考えて環境を調えていくしか、高温多湿の日本ではカビを抑制することはできません。

まず温度は20〜30度くらいがもっともカビが活発に活動するといわれます。なので梅雨から夏場がもっとも活動期になるということです。温度を下げるというのは、今では空調がありますが古民家では難しく私はこまめに拭き掃除をしたり柿渋や蜜蝋、あるいはヒバ油などを塗って対応しています。

また湿度は60%以上あると活発に動き始めます。除湿器もありますが隙間が多く、特に山にある宿坊は水気が多くてとても対応できません。風通しをよくするしかなく、窓を開けて湿度を下げる工夫がいります。

最後に栄養ですが、人の皮脂汚れやホコリ、ダニ、食べ物のカスなどなんでも栄養になります。湿気を吸い込む古い木材など栄養の塊です。

この3つの条件がすべて整うと、カビはすぐに繁殖して目に2日~3日で目に見えるところまで出てきます。また黒カビでも5〜10日ほどあれば出てきます。そうなってくると、掃除は3日に一度は続けないとコロニーをあちこちにつくられてしまう計算になります。

実際にはカビはいらないかといえばそうではなく自然界ではとても重要な役割を果たしています。カビが無機物を分解する御蔭で地球は循環していきます。アリやミミズのように分解してくれる御蔭で私たちもその恩恵が受けられます。それに麹カビやチーズを作るカビ、抗生物質のペニシリンなど人類には欠かせないカビもいます。とはいえ、カビは胞子を飛ばしアレルギーを誘発したり毒をもっているものがたくさんありますので折り合いをつけて生きていくしかありません。

むかしの人たちは全部排除するのではなく、やはりお手入れをしながらこの高温多湿の日本でうまく折り合いをつけてたのでしょう。むかしのことわざに梅干しにカビが生えると縁起が悪いというものがあります。これは本来、腐ったりカビが生えないものが家事を疎かにすることで生えてしまうといういわれもあるようです。

カビが生えないように意識することで、私たちは風通しや水の流れ、掃除などを実践することを忘れないようにしてくれているともいえます。

この時期は、特に気を付けて暮らしをととのえていきたいとおもいます。