伝承革新

昨日は、福岡県にある秋月鎧揃え保存会のメンバーが英彦山の守静坊で合宿を行いました。合宿というのは今は多くの人が同じ宿舎で一定期間ともに生活して共同の練習や研修を行うことをいいますが本来は暮らしを通してお互いを見つめ合う一つの作法だったのかもしれません。

郷に入っては郷に従えということわざもあります。もともと何かを取り組むのには目的や初心というものがあります。それを確認するためには、その中に一本流れている筋道やルール、そして理念のようなものをどう理解するかが大切になります。

浅いところしかわかっていないのでは自由に動けば周囲への迷惑にもなります。深いところでお互いがよく理解しあい、規律と方向性を知ることはお互いを活かしあうためには大切です。

宿坊では、朝のお掃除の作務から歴史の勉強会、瞑想や座禅に加え、お昼には精進料理を食べ、振り返りを車座で行いお山の参道をのぼり休憩をして理念を唱和してお礼とお掃除と記念撮影をして終えるという具合でした。

当たり前のことをやっているようですが、私が司る場の中に入り、暮らしを体感するなかでそこに流れている生き方というものが加わり心身が調います。このような体験や気づきは、唯一無二でありその人の一生の思い出にもなります。

人は思い出があることで意識が変わることもあります。どのような思い出をお互いが持っているかは、一生において何よりもかけがえのないものです。

時代が変わりますが、歴史は終わることはなく今に生き続けているものです。その歴史を生きる人たちにとって思い出をさらに甦生させて歴史を刷新していくことは伝承する喜びに満ちています。

本来、歴史を生きるというのは単なる金銭を優先する観光イベントや文化交流ではありません。それは生き方をどう実践するかという、どう生きるかというという話です。

それぞれに人はどう生きるかというものに向き合っています。そこに尊敬する先人たちや今も心に共に生きる先達がいるというのはとてもありがたいことです。

守静坊は、歴史の今を生きる存在であり静的な修行をし続けている場です。これからも、本質を守り、静けさを保ち、本来の宿坊のままに生き続けて伝承革新していきたいと思います。