日本人の美意識の一つに調和というものがあるように思います。自然のあるがままの姿、何もしない洗練された美、そのシンプルなものに徳を感じるものです。調和というのは、無理をしない姿でありないものはない、そこには完全そのものと実感できるものです。
私たちは善く調ったものを観ると安心します。それは調っているものは、自然に近いからです。この自然は、それぞれが安心している姿でもあります。場が調っているというのは、その場が安心しているということです。
万物の条理として、自然というのは絶対に変わらないものではありません。すべては変化していきますから調和もまた変わってきます。変化に対する調和があるということです。
例えば、花生けに花を活けても次第に枯れていきます。そして季節は廻りますし暮らしもまた変化していきます。その変化に対して、私たちは変化に合わせて花を生け直していきます。そのことによって調い、安心するのです。自然の変化に合わせて自分を変化させていくところに調和があります。そしてこの安心が美意識として私たちの心に薫ります。
つまりは美意識とは、安心することであり、安心とは自然であるということです。
不思議なことですが、自然のリズムやいのちの循環というものは私たちに全体との一体感を与えてくれます。これは私たちが個として認識する切り離されたものではなく、常に一体になって活動しているということの事実です。
変化の豊かさというのは心の豊かさであり、自然と共に歩んでいくいのちの喜びは、心の喜びです。日々、この今今を大切に味わって安心していきたいと思います。