場と人を結ぶ

聴福庵には珍しい方がたくさん来られます。そして多くの方が影響を受けてその後の人生が変わっていく方がいます。一つの家に出会うことで人生が変わるというのは大げさのように思えますが、そういう私も思い返せばこの家に出会ったことで色々なことが変わりました。

人が誰かに出会って変わるように、人は家というものに出会っても変わります。

家というのは、一つの伝承の器のようにも思います。言葉にできないものや文字にならないものを仕組みにして伝えていくのです。まさにこれが日本家屋の真髄の一つかもしれません。

特に自然淘汰の中で、それでも長い年月を経て遺された場所や家には不思議な力があります。その力は、永遠の力というか形を変えても価値観が変わっても失われていきません。それを守り甦生する人たちによって何度も息を吹き返していきます。

これは人間の生命も同じです。人の一生は限られていますが、そのいのちや志というものは代々受け継がれていくものです。形をかえても、何度も人を変えては甦生していきます。大事なものは伝承されていくのです。

それを保つもの、それを結ぶもの、繋ぐものとして私たちは器というものを用意します。その器は別では場ともいい、空間にいつまでも宿るものです。その宿っているものを形にする力、まさにこれは物づくりの醍醐味でもありますが敢えて形にすることで私たちは出会いをいただくこともできるように思います。

人との出会い、物との出会い、出会いは全てを一瞬で変えていきます。

そういう出会いがある場所に出会えたことも奇蹟であり、私はとても恵まれていることに気づきます。御恩をいただき、ご縁に感謝して場と人を結んでいきたいと思います。