和の心の根源

今の時代は、歪んだ個人主義が蔓延しすぐに敵対関係にし何でも分けて考える癖がついているとも言えます。そこに個々の我執というものが邪魔をして本来の和合した関係から遠ざかっているのも事実です。そんな時、日本民族の大切にしてきた和の先人たちはどのような意識で生活をしてきたか、そして日常の暮らしの中でどうその意識を役立ててきたかを学ぶことはこの今の時代においてとても大切なことのように思います。

日本には、むかしからお互い様や御蔭様という精神文化があります。これは関係性の中で調和させていこうとする姿勢、また折り合いをつけて和合しようとする和の心です。

この和の心というのは、どのようなものか。それをかつての先人たちは日常生活の中で智慧として用い、体感と意識を磨いてきたように思います。例えば、私は古民家甦生をしますが甦生するときにはまず家と一体になっていきます。家のことを深く尊敬し、知ろうとします。そしてその家の歴史や個性、そして一つのいのちをもった人格の存在として認めるところからはじめます。なるべく、善いものを遺したい、そして長所を活かしたいと、そのものが美しいと思えるところ、素晴らしいと感じるところを伸ばしていけるように知恵を絞ります。そうしていると、お互い様と御蔭様が訪れて感謝が循環しどんなことをしても好いことになっていきます。

この好い関係というのは、日頃から存在そのものを大切だと感じる関係のことです。もともと私たちの存在は宇宙がつくったものです。しかし気が付くと、世間が自分をつくってしまっている人が増えています。それくらい、周囲の目を気にしては評価や裁きを恐れて生活しているとも言えます。

自分のままであることや、自分らしくあることをやめてしまえば本当の意味での存在に気づけなくなるものです。自分の存在に気づく人は、周囲の存在の有難さにも気づきます。お互いの存在があるから、お互い様であり、そして御蔭様となります。なので、折り合いをつけるのにもよくないことがあってもお互い様だからと許しあい、善いことがあれば御蔭様と御礼をするのです。

存在そのものを思うとき、人は深く全てを丸ごと感謝します。それが一円融合であり、和の心の根源ではないかと直観します。

時代が変わっても、先人たちが大切にしてきた心の姿勢を継承し、次世代へとその生き方を伝承していきたいと思います。