人は大切な存在を失うと喪失感を感じます。これは心に穴がぽっかりとあくような感覚です。今まで当然いつもあったと思っていたものがなくなるのです。これは自分というものを形成していた大切なものが失われた時に感じるものです。
私も以前、親友を失ったときにこれを感じ、今までも何回もありましたが最も大きなショックを受けました。その時は、何か体の一部が失われたような感覚がありました。私たちの心というものは、自分との繋がりや関りによって一体になっていきます。離れていても心は一つであればなおさら、それが失われるということは大きなショックを受けるものです。
生きていると、人は必ず死ぬことがわかります。それは私もですが、自分よりも先に尊敬しているメンターや親友、同志や家族などがこの世を去るとその都度、大きな喪失感があります。
その時は、感情がどうしても追いつきませんが時間が経っていくと次第にその穴がその人がこの世にいないものとして入れ替わっていきます。自分の中に生き続けていくという表現をしますが、実際には自分の思い出の中に整理されて一緒に生きていくのです。
人生を旅に見立てたときに、一緒に旅をできるところまでを共にし、もしも別れたならその先を自分が前進していくのです。人生は過去の経験も同様に、自分が体験してきた記憶をもって前に進みます。体験してきたことが自分になり、自分の思い出を形成してきた人たちがいつまでも心に宿ります。これは人だけではなく、物でも場でも同じです。ずっと一緒に歩んでこれたということが、一つの奇跡です。
今でも、身近には大切なものや存在が多くあります。いつかは私が死んでしまい、遺されたものが存在します。その遺された存在のためにも、今は真摯に生きようと思うのがいのちの在り方かもしれません。
思い出はいつまでも遺しておきたい、そして今この瞬間を永遠に忘れないように生きていきたい、そういう人の間に愛があるように思います。
ご冥福を心からお祈りしています。