冬が近づいてくると、郷土の料理としてもつ鍋をよく作ります。この筑豊というエリアは、新鮮なホルモンが手に入る地域です。これはもともとこの地域が炭鉱によって栄え、先人たちがその食文化の中にホルモンを食べることからはじまったといわれます。
筑豊炭田では、たくさんの炭鉱夫が全国や海外からも集められました。一時期は、日本全国の半分以上のエネルギーをこの筑豊地域の炭鉱で賄っていたといいますから、人数をはじめ設備もそして食事の量も膨大だった時期があります。
このもつ鍋が発祥したのが筑豊地域だといわれる理由にはその当時、大陸から来て炭鉱で働いていた朝鮮半島の人たちが過酷な労働の後に活力源として食していたことが起源だといわれます。
このホルモンという名前の由来も色々とありますが、こちらの方言で「捨てるもの」のことを「放るもん」と私たちは呼びます。それがホルモンになっていったというのが故郷ではそれが理由だと言っています。なぜ捨てるかというと、それまでは動物の内臓であるもつは食材としては使えない部位だと信じられていました。正確にはもつとホルモンは部位が微妙に異なります。ホルモンは牛や豚の腸、もつは牛や豚、鶏などの内臓全般となります。
話をもつ鍋の歴史に戻すと、このもつ鍋が当時の庶民たちや炭鉱夫の間で朝鮮の人たちと一緒に食べているうちに気が付いたらこの地域の食文化として形成されていって今に至ります。
今ではもつ鍋といえばニラやキャベツがベースでスーパーでもどこでも簡単に手に入りますがその当時は季節もので手に入らないためノビルやセリなども使っていたといいます。
それにもつ鍋は薬膳料理でもあり、大量のニラやキャベツ、ニンニクやトウガラシ、玉ねぎなど色々と健康によいお野菜をたくさん食べることができます。このお野菜やもつには胃腸を保護する成分が多く含まれ、そしてビタミン、ミネラルが豊富に含まれており体の抵抗力増加、風邪の予防などにもとても効果があるといわれます。
よく風邪をひかないからといって、私たちの故郷でも食べています。季節の変わり目には、なぜかもつ鍋が食べたくなるのはかつてこの地で共に炭鉱で働きあい助け合って育ててきた食文化に助けられた記憶があるからかもしれません。
それぞれの地域にはそれぞれの食文化があります。その食文化を大切にしながら、歴史の味を伝承していきたいと思います。