日本には、暮らしを支えてきた道具がたくさんあります。私が日ごろ使っている道具たちもまた、千年以上前から先祖たちと共に私たち日本人の暮らしをずっと支えてきた仲間たちです。日々の暮らしの中でその道具を用いて一緒に生きていることが嬉しくて温かくて仕合せを感じています。
そう考えてみると、暮らしとは、道具にたちによって豊かに彩られてきました。最近では、何かオシャレな道具を使っていることが暮らしといわれたりもするようですが、本来は、歴史と職人たちの魂、また使い手の和の心やものを大切にして末永く伝承してきた人々の初心と共に生きている姿の中にこそ暮らしがあるように私は思います。これはこれで、また暮らしフルネスの記事として書いてみたいと思います。
今回は、少し木工のことを深めてみたいと思います。
木工(もっこう)は、木材に加工を施す作業または製作技能、あるいはその職人であり、家具製作(キャビネットおよび家具)、木彫、指物、大工のことを一般的にはさしています。工作、美術、家具製作などの領域をはじめ、建築や土木などの領域でも、木材を加工するときにこの言葉を使います。
私たちの祖父母や両親は、木工のことを大工仕事とも言っていましたが最近では日曜大工やDIYなどといって木製のものを使って様々なことをつくったりすることも当たり前になっています。
日本は全体の国土の7割が森林でできていて、杉や檜などの針葉樹、ケヤキや栗や栃などの広葉樹、これら加工できる樹木が200種類以上あるといいます。
これらの木を加工する中で、指物 (さしもの) 類・彫物類・刳物 (くりもの) 類・挽物 (ひきもの) 類・曲物類・箍物 (たがもの) 類といった木工技法が生まれたといいます。またほかにも斧(おの)、鉈(なた)、鉋(かんな)、鋸(のこぎり)、鑿(のみ)、鑢(やすり)などの道具を巧みに使う日本の木工技術は世界一とも評されています。
その技術は、仏教伝来からさらに発展し、日本人の精神性がさらに研ぎ澄まされ木工技術を昇華してきました。長い歴史と、高い精神性、そして見事な技術が、日本の伝統的な木工の歴史を醸成してきたのです。
木工製品の醸し出す雰囲気は、この日本の文化と暮らし、そして歴史のうえに成り立っていることを感じます。改めて、当たり前ではないこの日本の木工の粋を究めた木製品に囲まれていると先祖たちの息吹や大和心を身近に感じます。私が和にこだわることの一つに、この木工があることはこれらの意味からです。
ひきつづき、子どもたちに木工の素晴らしさが伝承していけるよう身近な暮らしの道具たちにこだわり大切につないでいきたいと思います。
コメント
木造建築で育ったせいか、「木」で作られたものには温かみや安心感があります。その背景には、材質を生かし切った職人さんのいのちが生き続けているのでしょう。「包丁」などもそうですが、日本人は「材料に合わせて道具を選ぶ」という優しさと智慧を持っています。これは「相手の持ち味を生かす」と同時に、相手に対する「敬の精神」と「譲の姿勢」の現れでもあるでしょう。あらゆるいのちと「丁寧に向き合う」という生き方を再確認しておきたいと思います。