畳~日本固有の文化~

昨日、聴福庵にて66年間畳業を営み今でも本物にこだわって作っている方とお会いするご縁がありました。畳も大切に使えば60年以上使えるものだそうですが、今までの痛みもありまた大切におもてなしする客間でもあることから畳を入れ替えることにしました。

お話をお聴きしていると畳の魅力や、畳がなぜこんなに日本的であるかを改めて再認識する機会になりました。

そもそも畳というものは、中国から渡来した文化が多い中で完全に日本で生まれ育ち延々と今でも大切に受け継がれている日本固有の文化の代表的なものです。つまり、日本人が生み出した発明品であり日本人の暮らしと共に一緒に今まで生活の中で息づいて共生してきた大切な道具であるともいえます。

この畳は、古事記にも記され莚(むしろ)・茣蓙(ござ)・菰(こも)などの薄い敷物の総称でした。そして現存する最古のものとして奈良時代のものがあります。今でも奈良東大寺の正倉院に保管されているそうです。その後は、平安時代には寝具や座布団の代わりとして用いられ鎌倉時代頃には部屋や床の全体に敷かれるようになります。武家が主だった畳も、安土桃山時代からは町人の間にも普及し、江戸時代頃には庶民の家にも普及します。

畳の名前の由来は使用しないときは「畳んで部屋の隅に置いた」ことから、動詞である「タタム」が名詞化して「タタミ」になったのが畳の語源とされています。

畳の効果は素晴らしく、イグサや藁が敷き詰められることで断熱性保湿性に優れ空気を浄化する作用もあります。つまりは夏は涼しく冬は暖かいということです。また音を吸収し遮音する効果があり足元から静寂を演出します。それに黄緑色の配力は心を癒すリラックス効果もあるといわれます。イグサ独特の香りも、私たちの心に懐かしく感じ和室の空間に流れる穏やかさをさらに引き立てるようにも思います。

また科学的にいうと人間の皮膚が呼吸をしていると同時に光も吸収しているといわれます。人間には自分の皮膚の色に近い反射率の色を感じると安心できるという本能があるとも言います。この畳の部屋の反射率が日本人の皮膚の反射率とほぼ同じということもあり畳の部屋は安らぎを覚える空間になっているそうです。

つまりは畳は土壁や木などと同じく「呼吸」をしているということです。私が感じる日本家屋の特徴は呼吸です。この呼吸は「息をする」ということ、つまりは「生きている」ということに尽きます。生きているからこそ、一つ一つの道具には「いのち」があります。そのいのちを大切に扱い、大切にいのちを伸ばしていこうとする作り手と使い手の「真心」があって「和」の空間は活かされていくのです。

イグサを育てている人の生き方、そのイグサだからこそ大切に作りたいという作り手の生き方、そして私たちがそれを子どもに伝承しようとする生き方、それが三位一体に寄り添って今回の畳替えが行われます。

12月には畳を私たちも一緒につくるという体験も得られます。この貴重な体験から日本人とは何か、日本の原点とは何か、日本の心とは何かをもう一度深め直したいと思います。

日本固有の文化に誇りが持てるような機会を子どもたちに伝道していきたいと思います。

 

  1. コメント

    イグサの香りや手触り、あの畳が一面に敷き詰められると思うとまたあの場が映えることを感じます。そして、作り手の想いを感じるとこちらまで誇らしく、そういった方と一緒に創り上げていく今が本当に有難いことなのだと感じます。色々な方と創っていく、これも日本の文化なのかもしれません。一つひとつの体験を子どもたちへ発信していけるよう学び続けたいと思います。

  2. コメント

    私は、現在も「畳のある家」で暮らしています。一時は、洋間に憧れたこともありましたが、やはり、「畳の部屋」は落ち着きます。畳にそのような効用があったということは知りませんでしたが、そう思うと「日本人の智慧」には、ほんとうに感服します。今も、畳の縁は踏みませんが、改めて、味わいながら暮らしてみたいと思います。

  3. コメント

    子どもの頃に住んでいた町に、一軒の畳屋があったことを覚えています。和室、その土台と感じるのが畳であり、その質感、その香りが創り出す場は子どもの頃から大好きなものでした。今は畳のようなもどきが増え残念に思っていましたが、12月の体験は原点を見直す大事な機会のように思います。子ども達に伝え遺せるよう、そのものが何であるかを深めていきたいと思います。

  4. コメント

    先日、園さんからの帰り道、一軒の畳屋を通りました。なにをしているのかを見ていると丁度畳のふちを縫っているところでした。夕刻であったため、夕日が差し込むその風景と漂うイグサの薫りにはなんとも言えない美しさがありました。12月に携われることがとても待ち遠しく感じます。

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