磨くことの意味

昨日は、高知から来ていただいた創業123年の竹材メーカーの経営者と一緒に古民家甦生の磨き体験を聴福庵で行いました。江戸時代の水屋箪笥や、建具の扉、また小物入れなど蜜蝋や米ぬかオイルを使い丁寧に磨いていきます。古民家の中では手入れして磨き上げられるものが多く、材料に事欠きません。

しかし現代の住宅では、表面上の掃除をモップや掃除機でできることはっても磨きあげるようなものはあまりありません。かつては学校も木造建築で廊下をはじめ椅子や机、様々な道具を手入れし磨き上げることで「磨けば光る」ということを語らずして学んでいました。今では鉄筋コンクリートで、さらには掃除の仕方も簡単便利な西洋の道具を用いることになりあまり掃除の価値も感じられなくなっているように思います。

昔から諺に「玉磨かざれば光なし」「瑠璃も玻璃も照らせば光る」などもあります。掃除には、単に片付けとしての掃除もありますが「磨く」という掃除もあります。掃除において大切なのはこの磨くことだと私は思います。そのものの価値をさらに光らせようとする、光るものを光るものだと気づかない自分の感性を掃除していくことで次第に色あせて澱んでくる自らの精神や心をいつも美しく保ち心を高めていくことで自分の観える世界が純粋に変化していきます。

この純粋な心は、磨くことで洗われ、手入れすることで維持されていくものです。日々の磨き直しは、心の手入れ、魂を磨くことであり、それは自分自身の持ち味や個性、天分の発揮、さらには自他を活かしていく力を高めることでもあるのです。

弘法大師空海はこう言います。

『人間は誰もが胸のなかに、宝石となる石を持っている。一生懸命磨いて、美しく光り輝く玉になる。』

この一生懸命に磨くということを教えてくれるのは、日本の伝統的民家の空間に息づく木造建築の中にすべて凝縮されています。それを磨くことで私たちは玉になる意味を学ぶのです。どんな人であっても、どんなものでも、どんな体験でも磨くことに意味があり、私たちは光ることでいのちを輝かせていきます。

中村天風さんはこういいます。

『「玉磨かざれば光なし」の歌にもあるけど、石も磨けば玉になることがあることを忘れちゃ駄目だ。「私なんか駄目だ」と捨てちゃ駄目だ。百歩譲って、いくら磨いてても玉にならないとしてもだよ、磨かない玉よりはよくなる。ここいらが非常に味のあるところじゃないか。』

誰かと比べて羨ましがり、見た目をコーティングしてもその一時的な光は必ず劣化していき崩れていきます。しかし磨く光は経年変化を繰り返し飴色のうっとりする色合いを持ち始めます。磨き続ける年月がそのものを光らせ、味わい深いものになる。磨く喜びは日々の過ごし方の在り方、その人のいのちの生きざまを育てていきます。

宇宙にあるすべてのものは必ず磨けば光るのです。ここに絶対安心を感じ、成長することの喜び、日々道場のある幸せを感じます。

子どもたちが憧れる生き方を追求していきたいと思います。

  1. コメント

    目に見える変化ももちろんですが、写真を通じて見ても日に日に温かみを感じるのは、物だけの変化では成し得ないことなのだと感じます。どんどん思い出も増え、どれも貴重な時間だと尚更聴福庵にいると感じるのは、あそこだけ別の時間軸で動いているような錯覚さえします。それは日頃から同じだと思うのですが、古民家にいると学びが多いのはまさに自分が磨かれているからなのだと感じます。この感覚を大事にこのプロセスを大切にしていきたいと思います。

  2. コメント

    「環境は、心の現れ」と言いますから、周りが磨かれていくと同時に心が輝き出します。磨かれて輝きを増すのということは、そこに「光が宿る」ということです。この光が宿るような環境でこそ、真の己を発揮できます。心にもしっかり光を宿し続けられるよう、環境とともに己を磨き続けたいと思います。

  3. コメント

    自分を磨く、自分が磨かれるときの自分自身の心境こそ、光るかどうかが関係してくるように思います。つらい、きつい、とばかり思っていては、その光は悲壮に満ちてきますが、有難い、うれしい、と感じていれば、その光は勇気や希望に変わります。大切なのは磨いていただいていることに対する事実をどう見ているのかということ、すなわちお陰様の状態なのかという事だと感じます。そこにある意味をしっかりと受け取れる自分自身でありたいと思います。

  4. コメント

    そのものを磨くことで光らせていくことも大事だと思いますが、それを見る目、受け取る心の方を磨いていくことで、そのものが光って見えるようになるということもあるのかもしれません。自分の価値観で見ていては決して見えてこないものを観ることが出来るよう、光るものと信じて丸ごと受け取っていきたいと思います。

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