自然農の田んぼで稲作をはじめて7年になりますが、田土に入る水の流れも変化してきたように思います。水を流し続けていれば、土の中の泥が次第に流されて小さな石が出てきます。ここの田んぼの水はきれいな山水を使うため、沢蟹やエビなど清流にすむ生き物たちでいっぱいになります。
そもそもこの水は地球を常に循環しているもので、山にある水は雲が雨を降らせた水です。そしてその雲もまた海や陸から蒸発した水が上空で冷やされ雨を降らせています。さらにはその降らせた水は、土の中に浸み込み地下を移動していきます。それを地下水といい、植物や木々たちはこの水を吸収してその水を葉から発散させていきます。
この地下水のあるとこを掘れば井戸ができます。井戸はその地下水の流れているところに穴をあけ地下の水をくみ上げる仕組みのものです。この地下水は、膨大な量の水が移動して地下をめぐりそれがあらゆる大地につながっていきます。
田んぼの土を掘ればすぐに水が溜まってくるのは、その土の中にいつも水が流れているからです。深く根をはる植物や木々はこの地下に流れる栄養豊富な水を吸収し太陽の光を浴びて風に吹かれて成長していきます。
私たち人間も同じく、その地球の栄養素の中で太陽の光と大地の水、それが空気の中で融和し風になり大きなめぐりの循環の中にあっていのちを育てていきます。何百年間もしくは数千年、数万年を経て水は地球の内部を移動していき水を浄化していますがその恩恵をいただき私たちが暮らすことができるというのは何ともありがたいことです。
古来の人たちはその水の巡りを知り、水がどのように流れてあるのかを知りその土地のことを想像したように思います。水脈を知ればその土地の水の流れがわかる。その水をどのように大事にして暮らしの循環の中に活用してきたか。自然から離れて暮らしている現代には見えにくいことかもしれませんが、地下水のことを思えばその上に住む私たちの生活様式の変化が観えてきます。
今度、聴福庵の井戸が甦生しますが地下水のことを改めて見直しそこにある水の流れを感じるような環境を用意してみたいと思います。引き続き、古民家甦生を味わいながら子どもたちに伝承する自然の仕組みを身近に感じられるように創造していきたいと思います。
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自然の循環、自然の巡りそのものを学んでいると実感すると、井戸を掘るのは、ただ掘ることが目的ではないこと、そして聴福庵にある全てのものにいのちが宿っていることを感じます。循環もどこか遠くの世界のことではなく、目の前の日常から学ぶことばかりです。この変遷も巡りであることを忘れず大事に味わっていきたいと思います。
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雨が、川となり海に流れるだけでなく、「地下水」として地中を巡り、大地を潤しているという仕組みに、改めて豊かさを感じます。また、大自然のさまざまな循環を見抜き、その循環に沿って暮らしてきた先人の智慧にも豊かさを感じます。そういった見えないところも含めた豊かな「循環の智慧」を学び直す必要があるようです。
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昔は自然の巡りや水脈、その土地の特性などの自然恩恵から考えて住む場所を決めていたのかと、当たり前のことなのかもしれませんが、驚きを感じます。今の自分自身には全く無い判断基準だったからです。子どもたちのためと判断基準を持っていても社会の中で生きるのか、自然とも生きるのか、その眼差しの広さでまた見え方は変わるものだと感じました。仕事も生き方も同じく一体何のためなのかを深めていけたらと思います。
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井戸から汲み上げる水と、蛇口をひねって出てくる水とでは、水というものに対する感覚が全く違ってくるのではないかと思います。蛇口さえ手に入れればどこでも水が出ると勘違いした人がいるという逸話がありますが、そもそもから離れてしまうと、一体何のおかげでそれがあるのかを見失うのかもしれません。見え難くなっているものをしっかりと観ていくことを大事にしていきたいと思います。