聴福庵で用いるクルーの羽織を今に合わせてデザインするために福岡県八女市にある久留米絣の老舗、織元の下川織物を訪問するご縁がありました。久留米絣の開発者の井上伝のことは以前のブログで書きましたが、今回はその久留米絣を受け継ぐ下川織物の2代目当主の方にお話をお聴きし工場の見学をさせていただきました。
この下川織物の理念は、『創業者の下川富士男の言葉「百年続けて一人前 を実現すべく百年続く仕事に取り組む。 世界に誇れる織物の追求。 人と人とのつながりが百年企業を実現させる』というものです。その百年企業を実現するために重要なテーマにしているのが、「循環」と「鮮度」であるといいます。また従業員を大切にし、家族的経営を目指しているというところにも私たちと似ているところもあり大変共感しました。
現在では世界各国から毎週のように訪問客があるといいます。先日も、海外のデザイナーが一か月間ほど下川織物で用意したゲストハウスに滞在し協働で久留米絣を使って製作したものをパリコレクションに出展したといいます。
この久留米絣の魅力、日本の発酵による染めや反物の美しさに魅了された世界各国の最先端で活躍する技術者たちもまたこの日本の職人文化の技の秀逸さに驚かれるそうです。
今回のお話でとても印象的だったのは2代目当主の語られた「継承」のお話です。
『ここの工場では、TOYOTAの2代目社長が発明した織り機が用いられ日々に織り込まれています。その2代目社長は生前、いつかガソリンを使わない車、水で走るものを発明したいと仰っていたがそれが今では水素で走る自動車の実現まで辿り着いている。あの当時は夢物語でもそれを継ぐ人がいたから夢が実現したということ。またHONDAの創業者、本田宗一郎もいつか飛行機のエンジンを作りたいと夢があってそれを継ぐ人があったから遂にHONDAは飛行機を飛ばすことになった。夢の実現にとってもっとも大切なのはこの継いでいくということです。』
一代では叶わなかった大きな夢も、その夢を継ぐ人たちによっていつの日かその夢が実現していくという事実は私たちに大切なことを教えてくれます。
伝統というものは、何よりこの継承することによって力を発揮します。継いでいくというのは本来何を継いでいくのか、志を持つ人たちが道をつなぎ、志によってその糸は織り成していくということ。改めてこの継承するということの偉大さを教えていただいた気がしました。
志もまた同様に様々な経糸と横糸を結び合わせて一つの偉大な反物に仕上がります。それをどのように見立てて仕立てていくか、それはその価値を甦生する人たちのお役目でもあります。
古きを温め新しくデザインされた聴福庵の羽織を纏う日が来るのが楽しみです。引き続き子どもたちのためにも、私たちも循環と鮮度を磨き上げていきたいと思います。
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夢があり、夢が広がるのはワクワクします。伝統的な反物がパリコレに出展というのには日本人として誇らしくなります。自分ごとのように誇らしくなる、という感覚も子どもたちが憧れる働き方の一つの指標ではないかと感じます。今や誰もが知るTOYOTAも最初は町工場からスタートしたと思うと、目指すべき方向に向かい日々実践を積んでいきたいと思います。
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「人間が思い描くことは、必ず実現可能である」と言われます。ただし、その実現までに、どれくらいの時間(歳月)がかかるかはわかりません。しかし、実現可能であるならば、その志を継ぎ、実現するまでその道を歩み続けるのみです。功名心に基づく「野心」ではなく、使命感に支えられた「大志」を継いでいきたいものです。
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聴福庵を通して繋がっていく伝統職人の方々のお話をお伺いすると、この継承という言葉の持つ意味の奥深さが広がっていくことを感じます。私たち自身もまた古来から遺伝子こそ受け継がれていますが、日本人として継承されてきているかどうかは今まさに問われているところです。そこにある繋がりを観ていきたいと思います。
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世の中には凄い方がいらっしゃることだとは
思いますが、そんな方々とご縁を頂けることは、自分自身に何のメッセージとして機会を頂いているのかと感じます。起きている出来事に一喜一憂するのも大事ですが、自分自身に対するメッセージとして頂いている機会を喜んでいきたいと思います。