出光興産の出光佐三は、日本的経営を実践していた方です。和の精神を尊び、人間尊重を第一に本来の日本人であるとはどういうことかを生き方や生き様でやり通した方です。
ここにきて世界の中で如何に日本が役に立ち、日本人が如何に世界で自分たちの文化を背景に活躍していくか、一つの世界に向けて大事な局面を迎えているように思います。そういう時だからこそ、改めて私たちは日本とは何か、日本人とは何かということを考えなければなりません。
2011年6月20日に出光興産の100周年を迎えた際に、新聞広告に下記のようなメッセージが発信されました。
『「日本人にかえれ。」
これは、創業者出光 佐三のことばです。
日本人が古くから大切にしてきた和の精神・互譲互助の精神、自分たちの利益ばかりを追求するのではなく、世のため人のためにことを成す。
佐三の信念によって、出光はいまも、そうした日本人らしさを心に活動しています。
東日本大震災に襲われた日本に向け、海外から届いたたくさんの励ましの言葉。
その中にも、佐三が大切に考えていた日本人らしさを称賛するものがありました。
その数々の言葉によって、私たちは勇気づけられ、日本人であることの誇りをあらためて認識することができました。
一方で、震災を経たいま、本当のゆたかさとは何か、私たちは何を大切にして生きていくべきなのか、これからの日本人のあるべき姿はどのような姿か、一度ゆっくり立ち止まって、向き合う必要があるのではないでしょうか。
本日、出光は創業100周年を迎えました。
これからの100年、私たちに何ができるのか。
世界が日本に注目するいま、私たちはこれまでの歩みを振り返り、新たな一歩を踏み出し、次の100年の社会づくりに貢献する企業を目指してまいります。
私たちは、日本人のエネルギーを信じています。』
出光佐三は、逆境の中で苦しい時に資金面でも精神面でも支えてくれた人がいます。その人の名は、日田重太郎といいますが親族や家族の反対を押し切って出光佐三に全財産を預けて応援します。いよいよお金がなくなり困窮した時も、自分の家を売ればいい、やれるだけやりなさいと応援します。
資金提供の約束としては、一つは従業員を身内だと考え、良好な関係で付く合っていく事。そして一つは、自らの考えを最後まで曲げない事。最後は、日田が資金を提供した事を他人に言わない事。この3つだったといいます。
出光佐三は金儲けのために働いたのではないことは、「出光の仕事は金儲けにあらず、人間を作ること、経営の原点は「人間尊重」です。」という言葉や、「金や物や組織に引きずられちゃいかん。そういう奴を、僕は金の奴隷、物の奴隷、組織の奴隷と言うて攻撃しているんだ。」、「黄金の奴隷たるなかれ」という言葉に残っています。
この出光佐三の日本人的な気質、その人間尊重の和の生き方に惚れ込み、ここまでした日田重太郎氏もまた日本人の精神をもっていたのかもしれません。
最後に、出光佐三が亡くなるときに昭和天皇が和歌を詠みました。
「国のため ひとよつらぬき 尽くしたる きみまた去りぬ さびしと思ふ」
国のために一心に真心を尽くして生きた出光佐三がいなくなることを寂しく思うというものです。
私もこの出光佐三に、深く共感しこのような方が郷里にいらしたことを誇らしく思います。同じ日本人として、和の心をどこまで高め磨き上げられるか。徳の経営ともいうこの日本的経営を子どもたちに譲れるように挑戦していきたいと思います。
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震災は生き方を見直す大きな転機となり、今につながる大きなきっかけでもあったと感じています。日田重太郎氏のことは今回はじめて知りましたが、家族の反対を押し切ってまでということに深い絆がここにもあったことを感じます。書店でもネットでも様々なビジネスモデルについて発信されていますが、先人の生き方は今目の前では見えません。ですが、そこから学ぶものは多く、今の時代にどう体現していくかは実践からしか現せないのだと感じます。少しでも日本的経営に近づいていけるよう、実践を積んでいきたいと思います。
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「個人が立派に力強くなっておって、そしてお互いのために尽くすというのが、日本の無我無私の道徳の根源である」「互譲互助、無我無私、義理人情、犠牲とかはみんな「お互い」からでてきている。大家族主義なんていうのも「お互い」からでてきている。その「お互い」ということを世界が探しているということなんだ」と出光佐三さんは仰っています。「互譲互助」の精神を持つ日本人にかえって、「日本的経営」「徳の経営」とは何なのか?!を考え直してみたいと思います。
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聴福庵で体験していくこと一つ一つが、カグヤの本業に活きていることを実感します。それは、組織の問題や、環境の問題は、「和」ができないと苦しんでいるのであって、売り上げを上げたい、人を増やしたいというニーズではないお客様ばかりだからです。自分の正解でも相手の正解でもなく、思いやりあいながら「和」していく体験は、当主の地域での体験や様々な取り組みから方向性を学び、自分自身もお客様の前でその考えで動き、つかもうとしている段階です。「しなやか」な人間であるためには、たくさんの物事と向き合い、勝つことよりも成功することよりも、自他を「和」にする覚悟と挑戦の量のように感じます。
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社内に掲げられた、二宮尊徳人生訓「汝仕事をなすとも必ず金を儲けんと思うべからず、ただ人道の本位を勤めよ」の言葉にも相通じるものを感じます。それぞれ生まれ育ってきた環境も違えば価値観も異なるのは当たりですが、日本人はもともと一つの理念をみて協力してきた民族なのだと改めて感じています。理念を深めることがそのまま日本人への原点回帰になるような、この感覚を大事にしていきたいと思います。