先日、古民家甦生で壊れた漆喰の壁を伝統工法で修復する作業がありました。糊も昔ながらの技法で海藻をコトコトと煮込み、漆喰を調合して壁面に塗り込んでいきます。
左官職人はまるで自由に滑らかに縦横無尽に鏝を使い繊細で緻密な作業を流れるように進めていきます。土づくりから参加してみてみると、下準備にかかる手間暇は膨大で最後の仕上げしか想像していなかった私には学び直すことばかりでした。
下準備や段取り次第では、仕上げの塗りができなくなることもあり、下塗りや中塗り、そして上塗りとコツコツと丁寧に壁を整えていきます。特に土の調合では、納得いくまで丁寧に何回もイメージしたものを混ぜ合わせていきます。
土は自然物ですから、その時々の気候や湿度、温度によって土の状況も異なります。その土と向き合い、その時々の環境の変化に合わせて微妙に調整をする、まさに職人技のなせるとことです。
今回は私も左官職人の指導で漆喰塗りを体験してみましたが、幼いころに遊んだ土遊びのことを思い出しました。幼いころは、川や水辺、田んぼの周辺で土を混ぜては様々な造形物を創りました。泥団子やダム、トンネルや、お城や動物など、想像したものを手で捏ねては塗り固めて遊びました。
あの頃のワクワクしたことを思い出し、土の存在を最初に身近に感じた頃の懐かしい記憶を思い出しました。土は、縄文時代以前からずっと私たちの身近にあって私たちの暮らしを支えてきたものです。
半永久的になくならず、そして甦生を繰り返して利用できる循環型の素材として土は永続的に家を保つのに活用されます。聴福庵の床の間や漆喰の壁の土もそこにあったものを剥ぎ取り、また混ぜ合わせて再利用されました。
どのような土で生きて、どのような土と共に歩んでいくか、土はその場所を動かないからこそ私たちはその土から生き方を学ぶようにも思います。
これから土は瓦の土と、茶室の土が入ってきます。特に茶室のものは、自然農で手塩にかけて育てて見守ってきた発酵した田んぼの土を使ってこれから左官職人と一緒に創りこんでみる予定です。
日本の伝統文化と職人の伝統芸術を遊びながら土の甦生を味わっていきたいと思います。
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職人さんがコテを扱う姿を見ていると、いとも簡単にやっているように見えますが、実際にやってみるとそうはいかず職人技というものを体感させて頂きました。身近にある土を用いて暮らしに活かされていたものが、今の生活で土に触れる機会はほとんどありません。子どもたちが土を使った遊びが好きなもの、きっと何かあるのだと思います。自分の手で直していくこのプロセスを大事にしていきたいと思います。
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自然物は生きていますから、その時の気温や湿度がかなり重要になってきます。その場所の条件に合わせて、最高の状態で仕上げるのがほんとうの職人でしょう。そういう意味では、あらゆる職人の仕事は、人間の都合を常に超えていなければなりません。そのものの本質を生かし続けるために、「丁寧な仕事をする」ということの意味とその深さを学んでおきたいと思います。
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土壁に見える藁の瑞々しさに、120年という年月をかけて生きてきたように見えて感動しました。生きるのであれば、ただ枯れて朽ちるのではなく、瑞々しさをもって生きたいものです。そのためにも、共生し、協力し、発酵して行きたいと思います。
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同時に行っていた井戸掘りの中で自分自身も幼い頃の記憶を思い出しました。子どもの頃は落とし穴や秘密基地に憧れて友達と一緒に構想を練ったり作ったりしましたが、ワクワクと夢中になっていた感覚があります。言い方は難しいですが、職人の方々の生き様には、ある意味でそのワクワクが残っている感じがしました。子どもの頃のような目の輝きを自分自身で感じていきたいと思います。