湿式工法の瓦葺き1

昨日は、伝統工法ができる瓦葺き職人さんに聴福庵に来ていただきみんなで一緒に瓦葺きを土葺きによって行いました。最近では瓦葺きを拝見することも少なくなってきましたが、一緒に屋根にのぼり瓦を一枚一枚葺いていくことではじめて屋根瓦の魅力を再発見できます。素材もそうですが、職人さんの手仕事には感動することばかりです。

この土葺きというものは、 近江大津の瓦工である西村半兵衛によって発明された平瓦と丸瓦が一体化した「桟瓦」が発明され、その瓦の風と地震対策として土葺き工法が行われたといいます。この土葺きは湿式工法とも言われ、野地板の上に杉の皮などの下葺き材を敷き、その上に粘土を乗せ、その粘土の接着力で瓦を固定していく工法です。

ただ関東大震災後に建築基準法に「瓦葺に在りては引掛瓦の類を使用し又は野地に緊結すべし」という言葉が追加されて今ではほとんどが土を使用しない「引掛桟工法」になっていきました。土葺きの減少は著しく、ほとんどが土のない屋根で軽量化された瓦を用いられています。

今では重要文化財や国宝など旧工事法を保存しなくてはならない建造物だけで、一般住宅で見かけることはほとんどなくなっているといいます。

土葺きは、一つひとつの瓦の個性や形状をみて瓦職人さんの塩梅で瓦割をして配置され施工していきます。こだわっている職人さんになると、何回も何回も数多くの組み合わせを試していくので葺くのに相当な時間を要するともいえます。

確かに、どの瓦もまったく同じ瓦であればそんなことをしなくても並べられますが、かつては同じ瓦などなくそれぞれに癖があったり形が異なるものが焼きあがっていたわけですから瓦職人の腕前と技術次第で自然の風雨によってすぐに雨漏りやズレたりもあったのかもしれません。

雨漏りする家はそこから腐りシロアリが来ますから、如何に屋根は家の生命線であるかを実感します。「家を自然災害から守るという観点」でもう一度瓦を観ると、これは本当に大切な役目を果たしていることを実感します。

本日も屋根にのぼり土葺きを体験していきますから、このまま深めてみたいと思います。

 

 

  1. コメント

    1枚1枚の瓦の重さも今回はじめて知りました。あの重さを支える屋根も柱もしっかりしていてこそ支えられると思うと、どの職人も手の抜けない仕事をみんなで支えていることを感じました。瓦がどんどんと葺かれていくのを見ると、また雰囲気が変わっていきます。井戸掘りの時もそうですが、職人さんとの関わりが増えるごとにまた思い出が増えるのはありがたいことでもあります。このプロセスを大事に味わっていきたいと思います。

  2. コメント

    職人さんが「空き缶の上に石をのっけた方が空き缶が安定するでしょう」とおっしゃいましたが、いくらしっかりと作られていても、中身がなく、また背負うものもなければ、何かの機会があればすぐに道を踏み外す人生のようなものだと感じました。中身は入れて頂くもの、重石は置いていただくもの。すべては頂き物なのだからこそ、感謝の心を忘れないようにいたいと思います。

  3. コメント

    震災等自然災害があると、みんなの「安全意識」が高まります。しかし、そのときに、これまで培ってきた日本人の智慧が、安易に一蹴されてしまうのは寂しいものです。「本当の安全とは何を守ることか?!」「安全のレベをどのスパンで考えるのか?!」そして、「歴史は、何を証明してくれているのか?!」その辺りをきちんと考えたいものです。

  4. コメント

    屋根の上に登り瓦葺きに触れて初めて屋根というものの存在、そしてこの近隣はまだまだ瓦が使われている家屋が多いことに気づきました。日頃は意識しないものですが、こうして実際に体験してみてその距離は少し縮まります。土の盛り方や瓦の置き方は知ることは出来ても、本当の意味で実感が伴うのはやはり暮らしと同じく、この建物を実際に使い始めてなのかもしれません。新たな物語が始まっていること、そこに何があるのかをしっかりと味わっていきたいと思います。

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