昨日は、聴福庵の離れの雨落ちのところに砂利を敷き風情のある犬走りができました。この雨落ちは軒先の真下に雨だれが落ちる部分のことをいいます。通常は雨樋があるのですが、この離れはむかしからの呼吸する屋根瓦を用いたためそのままの姿が美しく雨樋をつけないという選択をしました。そのため砂利を敷き詰めた側溝を設けたり、いし(雨落ち石)配したりして地面が凹むのを防いだり、雨水の跳ね返りを防ぐ必要が出てきます。
そこで犬走りといって雨が跳ねないように手入れを行いました。この犬走りとは、雨による汚れが建物に跳ね返ったり雨水が建物に浸透しないようにすることをいいます。諸説ありますがこの犬走りは建築用語でちょうど「犬が通れるくらいの幅」ということから「犬走り」といわれたり、施工したときに犬が歩いてしまい犬の足跡が残ることがよくあるといわれたりしています。
むかしからこの犬走りを設けるのは、家を雨から守るためです。雨が降ると、雨が瓦から軒下の土に落ちるとそれが跳ねては壁を汚します。またその雨が木材に長期的にかかると腐敗したり塗装が剥げたりします。
他には、軒下は雑草が生えやすく手入れをしていないとすぐに大量の雑草に覆いつくされます。その雑草に虫が集まり、さらには枯れたものから苔が生えたりと家の周囲が傷んできます。それが行き過ぎれば、蚊が発生したりシロアリなどが近づいてくる原因にもなります。
またここに玉砂利を敷くことで音による防犯などの役目があります。夜中に砂利を通ると音によって周囲に人の気配があるのが伝わります。今回は、黒玉砂利を敷きましたが玉砂利は土埃もたたず、水はけもよく、雑草も抑制し、清涼感があります。
雨が降ったあとに、乾いた黒灰色から湿った深い黒に変色することでより雨のときの空間に風情が出てきます。その玉砂利を囲む石は、山で雨によって崩れてきた岩の破片を集めて加工しました。
先人の知恵が家を守り、空間を引き立てているのを知り、日本の建築や庭園技術の奥深さを学び直しました。子どもたちに伝承できるものを丁寧に遺していきたいと思います。
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犬走りという言葉も初めて聞きましたが、神社の参道にも敷いてある玉砂利に美しさを感じます。そう思うと改めて、伝統的な日本の暮らしについて知らないことの多さを感じます。聴福庵の中で、伝統的な暮らしや智慧を大切に学んでいきたいと思います。
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確かに、日本建築には、「人」を守るだけでなく「家」そのものを守る智慧がたくさんあります。自然の豊かさを生かしながら、自然の副作用からも守ろうとする発想自体がほんとうに豊かです。また、「雨水の跳ね返り」まで気にする「日本人の美意識」、その「感性」も豊かです。日本人の「心配り」と「美意識」が、日常の暮らしのあらゆるところに、ふんだんに盛り込まれていたことを再確認しておきたいと思います。
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軒より落ちる雨垂れ石を穿つと言いますが、先日の豪雨ような勢いでなくても自然の力はあらゆるものを自然に戻そうとする働きを持っているのだと感じます。しかしまた人工物で打ち勝とうとするのではなく同じ自然の力をお借りして人が造る家を守ろうとするする先人の智慧にも趣を感じます。そこに何があったのかと目を向けていきたいと思います。