聴福庵には、床の間に飾る花台は唐木のものが多く使われます。この唐木とは、東南アジアやインドなどで伐採された紫檀や黒檀、タガサヤン、ビャクダン、かりんなどの熱帯産の木材の総称のことをいいます。
中国(唐の国の木)という意味で唐木ではなく、かつては唐を経由して、日本に入ってきたということからその名称になっています。今でも正倉院には遣唐使の時代より日本に伝わり唐木を使った唐木細工なども保管されています。
古来からある銘木である唐木は、乾燥が難しく風の当たらない湿気の少ないところでじっくりと乾燥させる必要があるそうです。また加工も非常に硬質素材で難しく、高級木材として重宝されてきました。茶箪笥や仏壇など、貴重品に用いられていたともいいます。この唐木細工の技術を持つ人たちのことを唐木職人といい、唐木指物ともいいました。
釘やネジを1本も使わずに各種組手で組み立て表面に漆をふきこんで仕上げた唐木指物は、和室にも調和しますが花台として花瓶と花と伴に床の間に配置すると凛とした品のある雰囲気になります。
現代では洋風建築が主流になり、唐木製品を使うこともなくなってきましたが伝統の技をもって加工する唐木細工は今でも日本の伝統工芸の一つとして伝承され続けています。
使い込むほどに鮮やかな味がある色になるという唐木は、古民家の中でとても良い働きをします。引き続き、一つ一つの伝統工芸の魅力を甦生しながら復古起新していきたいと思います。
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様々な家で以前使われていたものなどが、聴福庵に来て、ピタッとはまると以前からあったかのような、馴染んでいることがよくあります。そのものが持っているものと共鳴し合っているようであり、そして、聴福庵ではじめて触れる伝統工芸品が多くあります。それは、かつての外国人が日本の品をはじめて触れるような感覚に似ているのかもしれませんが、聴福庵が磨かれていくのと同じように、自分自身も学び磨いていきたいと思います。
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「唐木」という名称には、あまり馴染みがありませんが、「黒檀」の飾り棚や座敷机、花台などは、高級で、艶がよく、重いイメージがあります。そういうものを日本人がどのように取り入れ、どのような技術を磨いてきたのか。そして、日本の文化にどのように溶け込んでいったのか。日本人の品の高さと懐の深さも学んでみたいと思います。
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聴福庵での職人さんとの体験を通して、一見してもわからないものに多くの手間と時間がかけられていることを知りました。漆喰一つをとっても大変なものですが、魂が込められていくような仕事ぶりはそのものに宿り、唯一無二になるように感じます。そしてそのものに相応しい場があってこそ活かされることも同時に感じました。受け継がれてきたものの意味を感じ直していきたいと思います。