聴福庵の離れの土間を左官職人さんに仕上げていただきました。その土間には、炭を随所に活用したものになっています。装飾として菊炭を埋め込み、粒状の備長炭も混ぜ込みました。
極めつけは、古瓦を用いた音の出る犬走です。これは離れのむかしの造りを活かしたもので、雨樋を設置しなかった分、あちこちに水滴が落ちてはねてしまい周囲を汚してしまいます。それを通常は、砂利などを敷いて犬走をつくり工夫しますが今回はその水滴を活かしかえって綺麗な音が出るように瓦を土間に設置していただきました。
まるで水琴窟のような澄んだ綺麗な音が響き渡り、雨の日の外の音を静かに家の中で楽しめるようになりました。この水の音は、心を浄化し精神を安定させてくれます。
水滴と古瓦が奏でる懐かしい音は、今の機械音ばかりを聴いている心に清涼感を与えてくれます。その犬走の中には、備長炭を設置し水がゆっくりと水路に流れるようになっています。瓦の隙間にもまた粒状の備長炭を挟み込んで水路に塵や埃が落ち込まないように工夫されています。
左官さんとの協働作業でアイデアを湧かし、一つの芸術を実現するのはとても仕合せなことです。先日も、貝を装飾し磨き光らせる友人と一緒に考えて創った貝の首飾りもまた同様に一つの芸術になり仕合せを深く感じました。私は、どうも創作するのが大好きらしく心の情景を職人さんの技術とアイデアで一緒に実現するのが楽しいようです。
仕事もまた同様に、一緒に実現したい夢や理想に向かって協力してカタチになっていくのが楽しく仕合せを感じます。それがたとえ物ではなくても、その思想を顕現させていくような仕組みづくりやそのアイデアを活かした環境づくりなども大好きなようです。
改めて、自分自身が何によって癒されていくのか、そして仕合せを感じるのか。一つ一つの芸術が実現していくたびに近づいてきている気がします。顕現したカタチはお互いの心が響き合った芸術だからかもしれません。
これから聴福庵の伝統的漆喰の塗り直しと、おくどさんの竈の漆喰磨きを控えていますが一緒に復古創新する中で子どもたちに本物を伝道できる材料が集まってきたことにまた歓びを感じます。
子ども第一義の理念に沿って自ら信じた道を、直向きに歩み切っていく覚悟です。
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犬走りには様々な形があることを知り、雨音を実際に聞けるのが今から楽しみでもあります。季節を楽しむということはよく耳では聞くことではありますが、ああいった形で汚れを避けるだけでなく、音を楽しむという発想や風鈴のように音を楽しんだり、自然を取り入れる生活費が身近にあったのだと考えさせられます。音という観点からまた聴福庵を見たらまた違う何が見えてくるかもしれないと、新たな発見にわくわくします。
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「アイデア」は日常的にたくさんあります。ミーティングでもいろいろ出てきます。しかし、それが実際カタチになって実現していくのは、ごく僅かです。そこには、「響き合って楽しむ力」と「それをカタチにする技術力」そして、「カタチになるまで粘る力」が必要です。せっかくのインスピレーションが「アイデア倒れ」で終わってしまわないようにしたいものです。
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風呂の洗い場の床に鬼瓦を使ってデザインされていたのも斬新でしたが、今回の犬走もまた職人としてというよりは左官職人さんご自身がその場に溶け込んでいるかのようで面白さを感じます。漆喰塗りの時にも思いましたが、泥だんごや砂遊びをしている子どもの心がそのまま残っているかのような姿は、同時にこの一つの仕事だけでもどれだけ学びを深めていらっしゃるのだろうかと感じます。熱中というものに子どもも大人も関係がないことを改めて感じさせていただいています。