はじめて海外に留学した時に、世界では価値観が異なっているのを感じて自分の知らない世界を認識したことを覚えています。ある国の常識はある国では非常識になり、今まで正しいと信じ込んでいたことが如何に狭い世界だけのものであったかを知るのです。
正論ばかりを述べていた自分がその時は、実は正しいことではなかったかもしれないと知り、「郷に入っては郷に従え」の意味を痛感したものです。この諺は元をたどると中国の古典、「礼記」の 「入竟而問禁。入國而問俗。」にあるそうです。これを意訳すれば 「国境を越えたらまず国で禁止されていることを尋ねなさい。そして別の国に入ったらその国の慣習や風俗を最初に尋ねなさい」ということです。
自分の知らない国にはその国特有の文化や価値観があります。長い時間をかけて、その国の風土や歴史がその国の人々の暮らしの価値観を醸成してきたのです。自分の当たり前はその国では通用せず、常に自分がその国の価値観に合わせて変化させていく必要が出てきます。
相手を尊重するというのは、この価値観の受容に似ています。相手の言っていることを一理あるとして、その人の価値観を学び自分もその価値観を体験してみる。その上で自分の価値観もまた理解してもらい折り合いをつけていく。世界というのは、それぞれの人たちの中にあるものですからいくら同じ地球に住んでいたとしても価値観を通した世界は人の数だけ多種多様に存在しているのです。
そして私もまたこの留学を通して、自分の価値観でビジネスを展開していくことを決めたように思います。それぞれに価値観が異なってもいいのなら、自分の世界観を世界の価値観の中で打ち出していいと感じたからです。
私たちの価値観は子ども第一義の理念にそって、もしも自分が子どもだったら、そして未来の子どもたちにどんなものが譲れ何を片付けておくかと考え抜けば新しい価値観が出てきます。人類は、それぞれに問題意識やそれぞれの使命があり、一人一人が突き詰めて一つの真理に辿り着きます。そのプロセスで得た気づきを、周りの人たちと学び合い共有しながらまた混沌複雑な中から自分なりの答えを導き出して発信していくのです。
世界はこのようにできていますから、新しい世界は新しい価値観と共に変わっていくのです。人生の大事な局面において、自分の価値観をしっかりと持って歩んでいくことが道につながっていきます。
道に入るには、それぞれで道を模索する人たちとの出会いによって自分の道を見出し具体的な行動によって道を切り拓くのです。そういう意味ではまだ私は留学中のままなのかもしれません。
はじめての留学は私にとっては、世界観や自分の道に出会うための大切なプロセスだったように思います。今思えば世界の広さとは、その価値観の多様さのことなのでしょう。
広い世界で自分を生きることを子どもたちに伝承していきたいと思います。
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初めて海外に行った時、目に映るもの全てが新鮮で衝撃もたくさんありました。毎食、フィッシュ&チップスの時はどうにも飽きたり、フォークやナイフにも慣れないことがありました。そして、他文化に触れるたびに日本の歴史や文化を知らない自分を知り、まずは日本のことを知らなければということ随分思いました。自分が体験したことからしか伝えられないと思うと、本来あったものを大切にしていかなければならないと感じます。
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「国や地域における価値観の違い」もありますが、同じ国や地域でも「時代による価値観の違い」もあります。「日本人としての価値観」とは別に、「自分の生きてきた時代の価値観」もあります。特に、この「自分の時代の価値観」への固執には注意が必要だと感じています。同じ世界を見ていても世代によって「感じている豊かさ」の違いがあることを見失わないようにしたいと思っています。
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指針の人間関係の領域にも「外国の人など、自分とは異なる文化を持った人の存在に気づく」という項目があります。外国の文化であれば違いが顕著なだけにその幅は広がりやすいように思いますが、隣の人ひとりを見ても本当は異なる部分は多々あり、幾らでも学べるものなのでしょう。正解などないからこそ、異なるものをそのままに受け取り違いを楽しんでいきたいと思います。