現代建築の家の寿命は平均約30年くらいだといわれています。この理由は、耐久性を重視せずに建てられているからともいえます。また家主がその家を手入れしてまで直して使おうとしていないからだとも言います。実際に修理したりリフォームをしたりすることはしようとはせずに、すぐに解体して建て直すという常識もあります。
実際に、先日ある家を改築することになり色々と間取りを確認していたら生活スタイルや家族構成の変化に合わせて部屋を増やしたり減らしたりと改造されていました。途中からその時々に改造し、家を出ていきますから内部はだいぶ傷んでいますし使いにくくなっているものです。
それを次の活用に合わせてどうリデザインしてリメイクするかは、その家に住む人の判断次第です。ただしかつて100年も200年も長生きしている古民家を改修するのと現代住宅を改修するのとは異なり、メンテナンスの回数や時期も変わってきます。
例えば、土壁の漆喰や古民家のむかしの畳は床下から天井までの風通しがいいため長年傷むこともありません。しかし密封建築で風通しが悪いと、自然物を使ったものが呼吸ができずにカビが生えたりひび割れたりと痛みが早くなります。だから耐久性の低い人工物、例えばプラスチックの畳風のものを入れたり科学的に塗装した土壁風のものを入れることになります。
もともとそれらの人工物は寿命が短いことと、自然物ではないため人体にもあまりいい影響がありませんから劣化が早くメンテナンスの回数も増えていくのです。しかしそれらは流行ものですから、その時はあっても人気がなくなればすぐに廃版になったりしますから交換することも難しくなります。
こうやって痛む家というのは、全体的に見た目も悪くなるため解体して建て直した方が安くていいという話になるのです。また30年で建て替えることで、新しい仕事も発生しますし、家族構成が変わり流行もありますから建て直そうという家主のニーズとも合致するのです。
古民家であっても、何度か時代に合わせてリフォームして内部がぐちゃぐちゃになっているものもたくさん見かけました。そうなると子どもや孫の寒いし使いにくいし汚いし要らないという声にがっかりしている家主さんも嘆き節もありました。
しかしそもそもその直し方や手入れの仕方が、問題だったのであり家が問題だったわけではありません。そこに気づかないから、手が付けられないほどのコストがかさみ、本来の家の価値が失われていくのです。
家そのものの直し方を知るということが、家を本当の意味で長持ちし長生きさせていくということになるのです。空き家問題も抱え、建築バブルも崩壊し、新しい建物を建てにくくなってくる近未来において直し方の学習や研修などの必要性を感じます。
引き続き、子どもたちが安心して喜んで活用できるような長く愛される家を残していきたいと思います。
コメント
基本的に、「つくり方」のわからない人に「直す」ことは出来ません。それは「応急処置」であり、「その場しのぎ」でしかないでしょう。「つくり方」とは、「技術や方法」だけではありません。それをつくるときに込められた「願い」であり、その背景にある「思想」です。そう思うと、最近はあらゆる面で、「つくる人」にも「使う人」に「思想」が欠けているのかもしれません。