大切にしたい文化~暮らしのひとこま~

昨日、インターンシップにきている学生がこれからカンボジアでボランティアを通して新たな学びにいくための「はなむけ」としてみんなでお餞別を渡す機会がありました。その内容は、現地で必要になりそうな非常食であったり、常備薬であったり、お手紙や手作りの玄米クッキーであったり、また路銀としてお金も集めて渡しましたがとてもあたたかい気持ちになりました。

日本では、むかしから旅に出る人や大切な門出にこれらのはなむけやお餞別を贈るという文化があります。これも大切な徳の一つで、離れていてもいつまでもこのご縁を結んでいることを実感して絆を深めていたのです。

昨日も「離れていてもいつも一緒ですよ」や、「またお便りをくださいね」や、「何かあったらいつでも連絡してね」や、「どんな学びがあったかまた共有してね」など、ご縁をいつまでも大切にしていきたいという思いが伝わってきました。

この「はなむけ」という言葉は、「《昔、旅に出る人の道中の無事を祈って、乗る馬の鼻をその行く先へ向けてやったところから》旅立つ人の安全を祈り、前途を祝して、酒食をもてなしたり、品物を贈ったりすること。」(コトバンク)とあります。平安時代の土佐日記にうまのはなむけと出てきますからかなり昔から続いている文化であることがわかります。

昔は特に交通機関が未発達だったでしょうから遠出の旅行には苦難や困難がつきものだったと思います。そんな時、仲間や家族は旅に出る大切な人の安全を祈願し物品や金銭や詩歌を贈ったり、宴を催したのです。人を大切にし、みんなでその人のことを祈る思いやりや愛、徳がこの文化の生まれるきっかけだったのかもしれません。

またお餞別のほかにも旅につきものである「お土産」は元々「宮笥〔みやげ〕」といい、寺院や神社に参拝した際の神の恩恵を、お守りやお札等の仏や神にまつわる物品と共に近所や親しくしている人々に分けようとしたのが本来の意味だったそうです。

「路銀」については、昔は村落で旅行費用の積み立てを行ったところもあったといいます。旅行者は村の代表として、村人から集めたお金で遠くの寺社に参拝し、帰郷の際には旅費の代わりに神仏の恩恵(お守りやお札など)と共に土産話を聞かせたといいます。村人たちは普段耳にすることのない異国の話を聞き、知見を広げたのです。みんなで費用を出し合ってその人がお土産を持って帰ってくる、無事であったことに安堵し感謝し、道中の様々な体験を共有できることで村のみんなで喜びや仕合せを分かち合ったのです。

むかしはみんな「暮らし」を大切にしていましたから家族のように接していたように思います。その家族が旅に出るのですから、みんなその家族の未来の幸運を祈り、みんなで自分の事ように寄り添って心の豊かさを分け合っていたように思います。

時代が変わっても、大切にしたい文化はこの日本にはたくさんあります。子どもたちがいつまでもこの国や歴史、先人たちの生き方に美しさを感じ、それが誇りになり伝承されていくように私たちも暮らしを大切にしながら子ども第一義の理念を実践していきたいと思います。

  1. コメント

    あの世に返ることも「旅立つ」と言いますが、この「旅立ち」という言葉には「しばしの別れ」を受け入れるという覚悟の儀式のような面もあるのでしょう。また、この瞬間は、お互いが、出逢いからこれまでを振り返り「感謝」するとともに、これからのよき人生を「祈る」ための時間でもあります。忙しい毎日のなかで、ちゃんとそういう「ひととき」を持って、「出逢いの意味」を確認し合えることもまたしあわせなことです。

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