今回、組子ガラスや格子戸をなるべく多く取り入れて古民家を甦生しています。最近では洋風建築が増えていく中で組子を使ってものも少なくなってきましたが模様の入った木組みの建具や窓を観ているとその美しさにうっとりするものです。
そもそも組子というのは、組子細工とも呼ばれ、小さく切り出した木片を、釘を使わずに組み合わせて美しい幾何学模様を描く工芸品のことをいいます。木片の切り出しから行い、各パーツには組み合わせる際にパーツ同士を噛み合わせるための溝を彫ります。切り出したパーツをカンナやノコギリ、ノミなどを使って調整し、一切釘などの金属を使わずに丁寧にひとつひとつ手作業で組み合わせます。木を組み込んでいく工程は紙1枚の厚さでもずれてしまうと組み付けが出来なくなるほどの細かい作業で、熟練した職人の技術と木を知り尽くす知識が無いと作ることができないほどです。一般的にも最低でも10年の修業は必要だといわれています。
組子の歴史は現存する最も古いものは飛鳥時代に建てられた法隆寺の金堂や五重塔などの高欄に施されています。そこで今でも仏教建築の一部で伝来してものではないかといわれます。
平安時代末期には建具が貴族の暮らす寝殿で使われ室町時代には書院造りの建築で使われます。そして障子の桟や襖などにも細工を施すようになり装飾もより細かく美しいものになったといいます。江戸時代には数々の紋様と組み合わせ種類も200種類以上を超えるといわれています。
これらの紋様は、唐紙のときのブログにも書きましたが先人たちはその紋様に偉大な意味を見出して、紋様の力を身近に受け取ることで健康や幸福、願いや祈りの縁起にしてきました。ちなみに組子と合わせて格子というものもありますが、この格子は格子のマス目は魔物を見張ると言われ、魔除けの意味があります。細かく数が多いマス目は、子孫繁栄の思いも込められています。格子は権威や伝統の象徴として世界の建築で使われています。
これらの組子の紋様や格子を通して光が入ってくる陰影の美しさは、まさに光の芸術でもあります。私たちは、あらゆる紋様から自然の叡智を学び、自然を身近に生き方を磨いてきたのでしょう。
時代が変わっても、大切な生き方が伝承されていくように子どもたちへの祈りを形にして甦生の思想に活かしていきたいと思います。
コメント
日本家屋の「格子」や「組子」には、不思議な魅力があります。それが「魔除け」になっていると聞くと、納得できる一方、光と影まで計算されていると思うと、その芸術的な豊かさに驚きます。そういえば「家紋」も紋様ですが、これらの紋様を「自然」から学んで創り出すというのは「デザイン力」そのものです。そういう日本人の智慧と美の豊かさをちゃんと学んでおく必要がありそうです