道を磨く

英彦山の宿坊の甦生を続けていますが、そにたどり着くまでの道の整備を行っています。長いこと、人が踏み入れていない道は荒れていて石はたくさん転がり、倒木もあり、土砂も流れ込んでいます。宿坊をやるもっと前に、この道の方を先に取り組む必要があります。

むかしは宿坊が点在していたエリアで、それぞれに石を積んだ擁壁があり道が歩きやすくなっていました。手入れをしなくなった場所は、次第に崩れていき擁壁も一部なくなっているところが増えています。あれだけの大きな石を、どうやってこんなに積んだのだろうとむかしの人たちの智慧と労力の偉大さを尊敬しています。

今では機械で大きな石なども動かしますが、かつてのような繊細で時間をかけた美しい修理や修繕ができるわけではありません。費用がかなりかかり頭を抱えていますが未来の人たちのためにも色々と配慮しながら、道を整備しています。

英彦山には美しい参道があります。その参道は石畳によって形成されています。もともと参道は、そこを歩いているだけでも心を清め祓う効果があるといわれます。常夜灯や石灯篭も参道の両脇に配置され、美しい景観をさらに引き立てます。

かつてここには石畳がなく、きっと水の多い英彦山では道が崩れ雑草も生え手入れが大変だったのでしょう。そこに山伏をはじめ、関わった人たちが長い年月をかけてとても立派で丈夫な石畳にしてくれました。そこを数百年間、大勢の人たちが参拝して歩いたのが想像できます。

祈りとして「道がいつまでも壊れないように、道がいつまでもつづいていくように」と願いを籠めたのでしょう。不思議ですが、この参道を歩んでいると道を修繕してお手入れを続けたいと思い、またいつまでもこの道を絶やしてならないという気持ちになってきます。

道を歩む仕合せはこの世に生まれてきた幸福と同じです。

人は道を学び、道を知ることで、道に入ります。道に入れば、己を知り、徳を積むことができます。そうやって私たちはこの世で偉大な何かに見守られながら一生を謳歌していくことができるのです。

私たちの人生はこの道を歩むことからはじまります。

その道が壊れているのなら、修復するところが最初の一歩目です。そして後を歩いてくる子どもたちのためにもその道をよりよくして次の世代に譲り渡していくのが喜びです。

大切な心を保ちながら、今の技術でバランスを保って道を磨いていきたいと思います。

 

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